子供と犬の訓練

3回目のクラスの日。

JRT(ジャック・ラッセル・テリア)を連れてきた一家は、小学生の姉妹二人を犬とともに教室に残し、
「あとでむかえに来るから」
と両親は車で去ってしまった。

JRTは、リードもちぎれよとばかりに暴れまくり吠えまくり、姉(10歳くらい)はリードをつかんでいるのがやっとの有様。授業が始まり、私達飼い主はそれぞれの犬に前回習った "No Barking" コマンドを使い、静かにさせた。が、このJRTは一向に吠えるのをやめない。見かねたKimが、女の子からリードをとりあげ、毅然とした態度で犬を黙らせた。

しかし、リードを女の子に渡してしばらくすると、またこの犬は吠え始める。

授業は何度も中断され、ついにKimが女の子に向かい
「今日は私がこの子につくから、あなたたちは見ていなさい」
と、リードをとりあげる始末。ベテランのトレーナーに対してはこのJRTも反抗ができないのか、やっとおとなしくなり授業が再開された。

犬は、飼い主の家族を実によく観察している。誰が家の中で一番偉いのか、よく知っている。そして、子供たちのことは低いランクに位置づけていて、一緒によく遊ぶくせに心の中ではバカにしていたりする。だから、そんな子供たちの命令をおとなしく聞いてくれる犬というのは、少ない。子供たちだけに犬の訓練をまかせるというのは、どだい無理な話だ。素人にライオンの調教をまかせるようなものだ。

「子供の情操教育の一環として犬を飼いはじめた。犬の世話と訓練を通して、子供に責任感を身につけて欲しい」
という親は多い。それは立派なことだ。しかし、こういう親にかぎって
「私たち夫婦は忙しくて、とても犬の躾まで手が回らない。子供に全てをまかせている」
などと言う。

犬はビデオゲームではない。
買って与えておけばそれで済むと思ったら、大間違いだ。「責任感を身につけて欲しい」と言いながら、親の無知と無責任さを、自分の子供だけでなく世間にもさらけ出しているようなものだ。

犬を飼うことを決め(あるいは同意し)たのが親自身なのだから、その世話と管理・訓練に関する最終的責任は親にある。子供に役割を分担させるのは良いアイデアだが、放りっぱなしではあまりにも酷だ。犬にとっても、子供にとっても、不幸な結果を招きやすい。

JRTは、小柄で可愛らしい容姿に似合わず気が強いことで知られている。ちゃんとしたリーダーシップをとってやらないと、どんどん主導権を握られてしまう。この姉妹は、素人の私たちから見てもあきらかに犬になめられている。まったく、言うことを聞かせるどころの騒ぎではないのだ。

この日の授業は混乱をきわめ、我々生徒にとってこのJRT組は迷惑以外の何ものでもなかった。トレーナーもほとほとあきれたと見え、すぐに携帯電話で姉妹の両親に連絡をとっていた。厳しく叱られたらしく、次のクラスからはJRT組は必ず父親か母親が一緒に授業に参加することになった。

(2001年2月27日)

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