アラスカン・ハスキー

paw1.gif (869 bytes)アストロ球団並みの個性派揃い

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アラスカン・ハスキーは、最も優秀な犬ぞりレース犬としての歴史を誇る犬である。
しかし、彼らは他のそり犬、シベリアン・ハスキーやサモエドなどのように個々のスタンダードがあり、ケネルクラブに公認されている純血犬種ではない。
アラスカン・マラミュートとシベリアン・ハスキーの混血のことだと思っている人も多いが、これも見当違いである。大体、シベリアンとは似ても似つかない犬が大半だ。

では、アラスカンとは何か?
実際にアラスカンを所有しているマッシャー(犬ぞりを生業とする人々、犬ぞりレーサー)達の意見をまとめると以下のようになる。

つまり、そり犬として繁殖され、そり引きとしてバリバリ活躍する犬(訓練生・退役老犬も含む)ならば、姿形や毛色などは問わず「アラスカン・ハスキー」と呼ばれるのである。重要なのは作業能力であり、ルックスではない。
逆に、ペット犬として一日のほとんどを昼寝で過ごし、そりを引かない犬は、たとえ親がアラスカンでも本物のアラスカン・ハスキーとは言えない。ペーパードライバーじゃ駄目ってことだ。

実際にアラスカンを見ればわかるが、体格・毛色・目の色などてんでバラバラ。とても一つの犬種としてのスタンダードなど設定しようもない。それは彼らが「そり犬として優秀な犬」という、ただ一つの目的のために様々な犬種を混血して作出され、今でも改良が続けられているからである。

ただし、体重にはある程度の制限というか目安があるらしい。
オスでも体重55ポンド(約25キロ)を越える犬は、スピードが出ないので好まれない。

paw1.gif (869 bytes)アラスカン・ハスキーの始り

アラスカンの歴史は10,000年前にさかのぼる。
現在のカナダやアラスカに住む原住民が飼っていた犬が、その祖先だ。それから今にいたるまで、原住民はこのそり引きの得意な犬を運搬手段として大切にしてきた。

その後1890年代にアラスカにゴールド・ラッシュが起こり、このそり犬は鉱石の運搬手段として活躍する。
アラスカに金を求めて人々が移住し町ができると、余興としてそり犬レースが行われるようになった。マッシャー達はこぞって地元のそり犬と外来の犬とを混血し、より強く速い犬を作り出そうとした。これが、こんにちの「アラスカン・ハスキー」の始りといわれる。

混血に使われた犬は、イヌイット・ドッグ、シェパード、セッター、シベリアン…と、なんでもあり。狼の血も混入した。アラスカンのルックスがバラエティーに富んでいるのは、こうした歴史による。

その後もアラスカンは荷物の運搬や郵便配達、交通手段として重宝されたが、次第に飛行機やスノーモービルにとってかわり、第二次大戦後にはそり犬として働くアラスカンはほとんどいなくなってしまった。
だが、ユーコン川流域の北米先住民の小さな村で彼らは現役そり犬として飼われ続けていた。そして、その村出身の伝説的マッシャー George Attla がアラスカンを率いてメジャーなレースに圧勝したことでアラスカンが注目され、アラスカンは犬ぞりレース犬としての地位を確実にしたのである。

paw1.gif (869 bytes)いまどきのアラスカン

足の速い犬にしよう、とグレイハウンドが混血されたこともあったが、あまりうまくいかなかったそうだ。なぜならグレイはスプリンターであって長距離を走るには向いていない。さらに、重いものを引っ張り続けることはグレイの足には負担になるからだ。
しかし今日見かけるアラスカンには、グレイの血を引いた足がひょろ長く深い胸をしたものが時々いる。

またボーダーコリーを混血したこともあったそうだ。
ボーダーの知能の高さが、そりチームのリーダー(先導犬)を生み出すのに都合が良いと考えられたからだ。リーダーはカリスマ性を備えているのみならず、どんな状況下でも的確な判断を下しつつチームをリードしていかなければならない。この素質は訓練で作り上げることはできず、持って生まれた天性のものであるという。
たまに一見してブラック・ホワイトのボーダーそっくりなアラスカンがいるが、血統にボーダーが入っているのだろう。

さらに1999年には、スエーデン生まれのマッシャー Egil Ellis がアラスカンとイングリッシュ・ポインター/ジャーマン・ショートヘアを混血した犬を率いて北米のメジャーなスプリントレースを総なめにし話題を呼んだ。この新しいアラスカンが、今後のトレンドになるかもしれない。

ここまで読んだあなたは、
「なんだ、アラスカンって雑種じゃん」
と思うだろう。まあ、ぶっちゃけた話、そのとおりである。
世界的に有名なマッシャー Doug Swingley (1999年アイディタロッド優勝者、アラスカン所有)も、
「アラスカンは、そり犬として成功した雑種犬」
と表現しているくらいだ。彼はまた、様々な血を混ぜることで丈夫で優秀な素質を持った犬が生まれると言っている。

しかし、一般の雑種との違いは「そり犬として繁殖され、活躍している」という点である。

paw1.gif (869 bytes)ペットとしてのアラスカン

レースを見て「アラスカンってかっこいいな」と思う人は多いだろう。そして、うちでも飼って自慢したい、と思う人もいるに違いない。だが、アラスカンはペットとしてはどうなのか?

「アラスカンは、一般家庭の愛玩動物にはならない」
と、アラスカンのブリーダーやマッシャーは言う。そりを引きたい本能が強いので、その本能を満足させてやらないと、つまりそり犬として仕事をさせないとだめだ。運動の一部として毎日25キロの距離をそりで疾走するというのは、一般家庭ではちょっとむずかしい。

また、彼らは狼に近い性質を持っている。
市販のドッグフードは食べない。生肉・生骨や、鮭のぶつ切りを煮こんだスープなどを常食としている。そして、集中訓練や長距離レース中をのぞき、毎日食事をとることをしないアラスカンが多いという。野生の狼が毎日狩りをしないのと同じで、お腹が空いてないときは食べないのだ。

さらに、狼と同じく多頭の群れで生活することを好む。けっこう吠えるし、遠吠えも得意だ。これは余程の郊外でないと、ちょっと飼えない。

まあアラスカンをペットとして飼っている人がいないこともないが、飼い主はそれなりの準備と注意を払っているようだ。また、レスキューに収容されるアラスカンがけっこういることからは、認識不足のままアラスカンを飼ったものの途中で投げ出してしまった飼い主が多い実情が読み取れる。

とても魅力のある犬ではあるが、やはり我々一般人はレースでの彼らの勇姿を見て楽しむだけにしたほうがいいのだろう。

(2002年1月31日)

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