MISSY

missy

paw6.gif (869 bytes)やさしい拾い物

夫と一緒にTABIを森へ散歩に連れて行ったら、木立の中に犬がぽつん。

10歳はゆうに越えてると思われるお婆さんミックス。尻尾を見る限りもともと長毛のようだが、きれいに丸刈りにされている。首輪には薄紫色の新しいリボンがついている。でもIDタグがない。

足は関節炎が出ている様子でびっこをひいているが、それでもTABIに誘われると追いかけっこや犬相撲をとって遊ぶ。そして、私たちのあとをずっとつけてくる。

結局、大通りまで行き、Tim Horton'sでドーナツと飲み物を買って森の中で一緒に食べた。帰りは道々、近くの家々をめぐって「この犬知らない?」と聞いたのだが、誰も見たことがないという。仕方ないので、家まで連れて帰る。

夫がアニマル・コントロールへ電話している間、友達からもらった缶詰のドッグ・フードをあげる。どうせTABIは食べないから、こういう時のためにとってあったものだ。丁度私たちも出かける用事があったので、今回はアニマル・コントロールへ犬をこちらから連れて行くことにした。

アニマル・コントロールのオフィスは、SPCAと同じビルにある。受付で「この犬は私の所有ではない」旨の書類にサインをさせられる。自分の犬なのに偽って「拾った」と届ける人が多いからだ。とくに今回の犬は年寄りなので、「年取って 世話が大変だから捨てに来たんだろう」と疑われるのは仕方ない。

受付でボランティアをしているらしいティーンエイジの女の子は、汚いものを見るように私たちに冷たい視線を投げる。「邪魔だからってこんな年寄り犬を捨てるなんて、鬼だわ!」と、顔に書いてある。誤解だってば…

犬は、耳を寝かせて不安げに私たちの顔を交互に見る。
「大丈夫だよ、きっと飼い主が迎えにくるから」と言いながら首を抱きしめると、遠慮がちにペロリと私の手をなめた。そして、係員にリードを引かれ、とぼとぼとドアの向こうへ歩いていった。72時間以内に飼い主が連絡しなければ、原則的には里親に出すのだが、彼女の年からいって里親が見つかるとは思えない。そうなると、処分だろう。

受付の対応は、事務的だった。
この手のやりとりは厭き厭きしてるのだろう。書類には、犬種のところに「ラブミックス」と書かれた。どう見ても…と思ったが、飼い主が現れなければどのみち処分になる犬の犬種など、どうでもいいのだな。

なぜ彼女の飼い主は、彼女を外へ放したのか?
なぜ連絡先を記したIDタグをつけてやらなかったのか?
最後に私を見上げた、彼女の優しい目が忘れられなかった。

数日後、SPCAに電話をしてみた。
「ああ、あの丸刈りのおばあちゃん犬ね、飼い主が引き取りにきたわよ」電話の向こうのはずむような声に、思わずこちらもうれしくなって「よかった!ありがとう!」を繰り返した。

paw6.gif (869 bytes)あれれ?

TABIと森へ散歩に行ったら、木立の中に見たことのある犬が。

ダッ!とTABIは一目散にその犬に向かって尻尾をふりふり駆けて行く。あれ?よく見たら、ほんの2週間ほど前に保護したおばあちゃん犬じゃないか?!

彼女も私を覚えていて、ニコニコして走ってくる。SPCAで飼い主はお小言をもらったらしく、真新しい犬タグと市のドッグライセンスが首輪についている。タグを見たら、名前はMISSY。せっかく家に戻ったのに、また家出しちゃったのか?

missy
またお世話になります

しょうがないので、一緒に散歩してうちに連れて帰る。タグについていた飼い主の電話番号にかけた。そして、夫が車でMISSYを飼い主のもとへ連れて行った。

飼い主によると、前回は大工さんが来て工事している間に、開いてたドアから出て行ってしまったのだとか。今回は、ケーブル会社が工事に来てドアを開けたらやはり出て行って姿を消したそうだ。 「SPCAでは、釈放料に$110も払ったのよ!」と、飼い主は憤慨していた。

帰り際、「お礼に」といって冷凍した大きなムースのステーキ肉の塊をくれた。旦那さんがきっとハンティングでとってきたんだろう。おとなしくおりこうさんしていたTABIに、ご褒美だ。

paw6.gif (869 bytes)あれれれ?!

森の中で立ち止まったTABIが、急に走りだし木々の間に消えた。

またウサギか、と思ったらなんと、去年迷子になったところを二度保護したMISSYがいた。今日は首輪もIDもなし。飼い主は一体何を?!

犬コレクターとか言われてもヤダからほっとこうか、と思ったが、彼女はトコトコとついて来る。真冬にペットの犬が森の中で凍死せず生きていくチャンスはほぼゼロだし、連れて帰る ことに。うちで続けて3回も保護したのは、JACKに次いでMISSYが2頭目。

途中で犬友達にバッタリ。
いきさつを話したら「わざと飼い主が逃がしてるんじゃないの?ひどいわねー」

確かに、老犬で足をひきずってるし、世話しきれなくて捨てられた可能性も。
「こないだも、問題行動が治らない犬を飼い主が猟銃で撃ち殺したのよ」
う〜ん、撃ち殺すのと森で凍死させるのと、どっちが犬にとって楽なのか?

家に帰ると、MISSYは勝手知ったる我が家、とでも言うように玄関でお座りし、尻尾を振りながらドアが開くのを待っている。やれやれ。2頭にご飯を食べさせてから職場の夫へ電話。
「また常連さんが来てるのよ」と言うと、「誰だ、JACKか?MISSYか?!」

夫が帰宅してから、彼がMISSYを飼い主の家へ車で連れていく。 今度は旦那さんが玄関に出てきて、開口一番「また外をうろちょろしていたか!この大馬鹿犬め!」だったそう。家族の誰も彼女を心配していた様子がなく、彼女を見ても誰も寄ってこなかった。MISSYも、ただ耳を寝かせて家の奥へスゴスゴ消えてしまったという。

だけど犬の年齢を聞いてビックリ!まだ7歳だって!白髪・白内障・関節炎・皮膚炎に加え、歯石や体臭・活動量などからSPCAでさえ10歳はゆうに越えてると判断したのに!中型犬だし、7歳はまだ若い。アジリティのトライアルだって、7歳くらいの犬はまだまだ現役で走ってるぞ。

missy
アタシ、まだ若いのよ

飼い主は「もうお宅に世話になることはないよ」と言った。「明日、引越しだからね」

さようなら、MISSY。新しい町では、もう迷子にならないでね。

犬保護のおかげで予定がすっかり狂ってしまい、さて夕食を、と思ったら夜の9時。ピザのテイクアウトですますことにした。あ〜あ。犬助けもたいへんだよ。

(2003年9月4日)

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