JACK

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paw6.gif (869 bytes)JACK THE DOG

夕方いつもの森にお散歩に行ったら、森の中から犬が一頭飛び出てきた。

コートの色がマウンテンドッグだが、短足だ。体重は40ポンドくらいか?とても人懐こく、TABIとかけっこをして仲良く遊び、ず〜っとうちまでついてきた。首輪もタグもついてるので飼い主が心配してるだろうと、タグに彫ってある電話番号にかけてみたところ、 「この番号は使われてない」という録音。

だが狂犬病予防済みタグを見たところ、うちと同じ獣医さん。夜遅くて病院は閉まってしまったが、翌日病院に連れていって聞けば、飼い主がわかるかもしれないと思った。

「JACK」と名を呼ぶとちゃんと来るし、お座りや待てもできるし、とてもおとなしくてお利口な犬だ。そのへんのものを齧ったりいじくったりもしない。TABIと仲良くご飯を食べ、コンピュータに向かう私の足元で、二頭が一緒に丸くなって寝ている姿は、とてもかわいい。

ただ去勢してなく、スキあらばTABIにのしかかろうとする。 おまけに、ものすごく水を飲む!いくら水皿を満タンにしても、すぐカラになってしまう。腎臓か糖尿病か、どこか悪いのでは?それに、ちょろちょろと尿がもれるので、JACKが歩いたあとをついてまわって床掃除だ。 

TABIパパが今日は遅いため、突然のお客の事情を書いたメモをドアに貼って先にやすむ。TABIはクレート、JACKは犬布団をクレートの横に置いて寝かせる。

夜中3時過ぎ、TABIパパ帰宅。
JACKは、見知らぬ男が入ってきたものだから警戒して吠える、吠える。おまけにオシッコをもらしてしまった。すぐにTABIをクレートから出す。パパの顔をペロペロするTABIを見て、JACKはようやく落ちついてパパのそばに近寄る。それからは安心して、布団に戻ってすやすや。

翌日、午前中にJACKを獣医のところに連れていく。

コンピュータに狂犬病予防済みタグの番号を打ち込んでもらったら、すぐに飼い主がわかった。我が家から自転車で10分くらいの距離のところに住んでいる家族だった。 飼い主が来るまで、獣医さんのところであずかってもらうことになった。とにかく、見つかって良かった。

あの子は、発情期のメスのにおいにひかれて脱走し、森まではるばる来てしまったらしい。JACKのように脱走して、放浪中に車にひかれて死ぬ未去勢のオス犬は多い。

数日後、散歩がてらJACKの近所まで歩いてみた。JACKの家は、タウンハウス(長屋式に一軒一軒が壁一つでつながっている集合住宅)が立ち並ぶ一角にある。あまり裕福でない層が住む住宅街だ。JACKが1歳を過ぎて去勢されていないのも、経済的な理由なのだろう。ここには、自由に走りまわれる広さの庭もない。

JACKの姿は見えなかった。

paw6.gif (869 bytes)JACK再び

散歩に出た先の湖で、また放浪犬が森の中から飛び出してきた。

なんか見覚えあるぞ、と思ったら、一年前に保護したことのあるJACKじゃないか!
驚いてたら、向こうからMAGGIEとその飼い主Trishが来た。「あら、その犬、私が数ヶ月前に保護した子だわ!」と、Trish。近所の道路で車にひかれそうになり、彼女が助けたのだそうだ。犬タグがついてなかったので、アニマルコントロールに引きとってもらったらしい。

「いい子なんだけど、去勢してないからMAGGIEにのしかかってはケンカになってね。MAGGIEはとっくに手術してあるからいいけど、大変だったのよ〜」と、Trish。うーん、うちと同じだ。

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エヘへ、また来ちゃった

二人で首輪を確認したら、新しい犬タグがついていた。名前も電話番号もある。私たちについて来たので、湖で一緒に遊び、私がJACKを連れて帰った。2頭に水とご飯をやり、タグの電話番号にかけてみる。 今度はつながった。

迷子のJACKを預かっていると言うと、電話に出た女性は、煙草でガラガラになった声で「忙しいから迎えに行けないわ。亭主が帰ったら行かせるからそれまで預かってよ」

なんだこのババア!
丁度夫から電話があったので、事の次第を伝える。
「よし、オレは早めに帰るから一緒に獣医のとこへJACKを連れて行こう。うちは犬守りじゃない。飼い主は責任感のカケラもない連中なんだし、然るべき場所にやった方が犬のためだ」

夫が帰宅し、JACKにリードをつけて玄関を出たところ、二人の高校生が丁度こちらへ歩いてくるところだった。犬を引き取りに来たという。 本当の飼い主か危ぶんだが、犬は尻尾を振って顔見知りのようなので引き渡すことに。

「ちゃんと管理しないとダメだよ」と夫が説教すると、「この子はいままで脱走したことなんてないのよ」だって。大ボラ吹きめ!これで少なくとも3度目だぞ。あの母親にこの娘ありだ。

JACKは、ほとんど使ったことないようなリードにつながれ、帰って行った。

paw6.gif (869 bytes)さすらいの犬

TABIと散歩に出て、森に入ったところで黒いものが。スカンクだ!としりぞいたら、出てきたのは犬。それも、なんと、JACKじゃないか?!

私たちを見ると、尻尾を振ってついてくる。やれやれ。真冬の森にそのままにしておけないから、今回も連れて帰ることに。

あいかわらずIDタグはついてないし、去勢もまだ。TABIに馬乗りになろうとするので、TABIは歯を向いて反撃。かなり本気で噛んで、JACKを泣かせている。私もべつに止めない。JACKは学習するべきだ。

大量の水飲みと、尿もれもあいかわらずだ。最初に彼を保護してから2年近く、飼い主は異常に全く気づいていないのか?知っていても獣医に診せていないのだろう。憔悴しきった顔は、放浪による疲れなのか、病状が進行しているためなのか。今回も床掃除が大変だ。

友達からもらった缶詰のフードがあったので、与えてみる。どーせTABIは食べないし。JACKは、猛烈な勢いで全部たいらげた。600g以上ある大缶をだ。体は、あばらが出ている。ロクに食べていないのか?心なしか、苦労した顔をしている。また、私のあとを影のようにピッタリついてくるのだが、TABIパパの近くへ寄ろうとしない。 前にうちに来たときは、あんなに仲良く一緒に遊んだのに。

TABIパパだけでなく、男性を極端に恐がり、ガタガタと震える。前回はこんなことはなかった。男性に虐待されたのだろう。かわいそうに… TABIパパが暖炉に薪をくべようと、薪を手に立ち上がった瞬間、JACKは猛烈な勢いで部屋の隅に逃げ込んだ。やさしい声で呼んでも来ない。誰かに折檻されたのかもしれない。恐怖で目がうつろになっている。

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心なしか苦労した顔


この様子を見て、今度は飼い主に連絡せず、直接アニマル・コントロールに迎えに来てもらった。もっとちゃんと管理できる新しい飼い主を見つけてやったほうが、彼のためだ。

アニマル・コントロールのオフィサーに事情を話した。これが最初の脱走ではないこと、虐待による精神的トラウマを疑うような行動が見られること… しかし、オフィサーはそういう話は耳にタコらしく、眉ひとつ動かさず聞いていた。そして、「エサを長期間与えられず骨と皮だとか、殴られて骨折や出血しているとか、明らかな虐待の証拠がないかぎり法的にはなにもできない」と言った。

コントロールでは規則どおり72時間犬を保護し、飼い主があらわれない場合はアセスメントをしたのちにSPCAで里親を探すことになる。 保護期間中に飼い主が引き取りに来たら、たとえ彼らが管理責任をあまり果たしていない人物であったとしても、お説教したのちに犬は引き渡される。収容所はいつも満杯だし、いちいち同情していたらキリがない。

まったく犬の運命は、飼い主次第だ。

どうか飼い主があらわれませんように。新しい良い里親が見つかりますように。

(2003年9月4日)

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