11月

cenotaph
戦没者慰霊碑

11月は、自由と平和の祈り。

錦に色づいた木の葉が風に舞い、きーんと刺すような空気に冬将軍の訪れを予感するこの季節、人々は赤いケシの花を胸に飾る。そして、11日のRemembrance Dayにカナダ全国各地で行われる戦没者慰霊式典を迎える。

この日は、第一次世界大戦の終結を記念するものだが、式典は全ての近・現代戦の犠牲者、そして平和維持軍として参加して命を落した軍関係者たちの魂の安らかなることを祈るものである。
午前11時から2分間の黙祷が始る。

参列者には復員軍人も多い。第一次・第二次大戦経験者はすでにこの世の人でないか、かなりの高齢である。朝鮮戦争の復員軍人もお年寄りだ。だが、きちんと軍服に身を包み、ある人は車椅子で、ある人は杖をつき、かつての戦友をしのんで頭をたれ、祈りを捧げる。

戦争で夫を、父を失った女性たちは、慰霊碑にリースをたむける。
ティーンエイジャーたちは、自分と同じ年でお国のために命を散らした兵士たちの無念さを思う。

第二次世界大戦では、日系カナダ人はカナダ人として戦線に参加した。
父母の国と、自分の生まれ育った国。二つの祖国にはさまれ、銃をとらざるを得なかった彼らの心の痛みは、いかばかりであったか。

黙祷が終わると、参列者は胸のケシの花をとり、慰霊碑にたむけられたリースに刺して去っていく。
異国の土となった戦没者のために。

「平和のために戦った、あなたたちの尊い犠牲を、決して忘れまい」
と、慰霊碑は誓う。だが、フランダースの草原が赤く染まった日から80年以上を経過した今でも、必ず地球上のどこかで人々は同じ過ちを繰り返している。

彼らの魂が安らぐ日は、来るのだろうか。

(2001年11月11日)

TABI一等兵

TABIの足跡
初雪や犬の足跡梅の花
(春喜多留)

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