犬ぞり体験と雪山サバイバル
(2002年1月26日〜28日)
料金は2002年1月現在のもの
雪には事欠かない大西洋岸州の中でも、ニューブランズウィック州は積雪量が豊富なことで有名。そこで今回は、お正月休みに犬ぞり体験ツアーに参加することに。
ところが暖冬のため雪が少なく、延期。最低18インチ(約46cm)積らないと駄目とのことで、雪待ちすること一ヶ月。やっと「雪OK」の連絡を受け、大急ぎで仕度をして週末を利用した二泊三日の旅に出た。
Bathurst |
州の北部、シャラー湾に面したこの町は、冬の平均積雪量400cmを誇り、スキーや犬ぞり、スノーモービルなどのウィンタースポーツが盛ん。とくにスノーモービラ−に人気が高く、毎年2月にアトランティック・ウィンターナショナル・レースが開催されることでも有名だ。
Ski-Dooと一般に呼ぶスノーモービル
高速を車で走っていると、道路脇をスノモ族がドドド…と走り抜けて行くのに出会う。このあたりは、スノモ専用パーキングやリペア・エリア、レンタルなどのサービスを完備した宿泊施設がたくさんあるのだ。冬にはフロリダやメキシコなど暖かいところへ旅行に出るカナダ人が多いなか、わざわざ寒い思いをしに雪山へ出かけるなんて、変わった連中だと言う人もいる。ま、私達だって犬ぞり体験だもの、堂々変人の仲間と言えるだろう(笑)
パッケージ |
今回利用したのは、Teagues Lake Dogsledding の犬ぞり体験ツアー(詳しくはドッグスポーツへ)のパッケージ。これに含まれるのは、
である。一家族(大人2人と子供2人)で$325だが、うちは子供なし(犬はタダ)なので$315(税込み)だった。さらに、私達はゆっくりもう一泊して帰りたかったので、一泊分$62を追加した。
また、犬ぞり体験は午前の部を予約したので、午後はネイティブ・アメリカンをガイドに雪山サバイバル・ハイクに挑戦してみた。
土曜日:Bathurstへ出発
日曜日:犬ぞり、雪山ハイキング
月曜日:フィットネス・ジム、ホテルのブランチ、帰宅
Keddy's Le Chateau |
便利のいいダウンタウンに位置するこのホテルは、コンベンション・センターも兼ねており、ビジネスマンが多く利用している。部屋にはズボンプレス、コーヒーメーカーなど出張族にうれしい設備が。また、コピーやファクスのサービスもある。フィットネス・ジムやプールなどの設備も利用できる。
もちろんスノモ族もたくさん訪れるので、レンタルなどのスノモ専用サービスが完備。カフェテリアの質も高く、ブランチのメニューはヨダレもの。私達は、犬ぞりと山歩きで疲れた体をサウナで温め、プールで泳いで充分にリラックスできた。
ペットOKだが、マナーを守って常識ある行動をとることが必要。
雪山サバイバル |
ガイドをつとめてくれた Gilbert は、ミックマック・インディアンの末裔。頭髪こそ現代風に短く切っているが、子供のころから曽祖父・祖父・父からミックマックの伝統をみっちり教えられ、ミックマックの生き字引のような人物である。
Gilbert Sewell
かつてはカナダ陸軍で山でのサバイバル術などを講師していたという。現在は、地元の大学でミックマックの言語や歴史を教えている。彼はその世界ではかなりの有名人のようで、CDも出している。
いつも山歩きをしているためか、とても62歳には見えない立派な体格と元気な足取り。早速、私達もスノーシューを借りて深い雪の中を歩きはじめる。TABIは、大喜びで跳ねながらついてくる。
スノーシュー
スノーシューは、テニスのラケットに靴をひっかけるヒモがついたようなかんじで、深い雪を踏んで歩くのに適している。初めは歩きずらかったが、すぐに慣れてスイスイ歩けるように。先を行く Gilbert
はひょいと立ち止まって木の幹に生えたキノコをもぎり、
「これはね、皮膚の悪性腫瘍を治すのに使うんだよ」
と言ってTABIママにくれた。カサの部分が金色に光る、不思議なキノコだ。こんな風にして道々、森の中に生えている薬草をとってはその薬効を説明してくれる。
上は、木の幹から染み出た樹液。これをとって煮詰め、カヌーを作るときに目塗りとして使うのだそうだ。また
Gilbert は、白樺林で木の皮をバリバリとはがして集め始めた。
「火をおこす時にこれが役立つ」
さらに、松の木の枝をバキバキと折って抱え、
「これは燃やしても煙が立たないんだ。だから、敵に自分のありかを知られたくない時には最適なんだよ」
と言う。私達も、枯れ枝を折って集めるのを手伝う。
除雪車と化したTABI
一時間半も歩いただろうか。
すっかり忘れていたが(笑)、肩まで雪に埋もれながらもTABIはちゃんとついて来ていた。雪に顔をつっこむのが好きなので、マズルにぐるりと雪がつき、まるで「カールのおじさん」を白黒反転したような顔だ。時々足の裏の毛につく雪だまをかじりとりながら、ぴょんぴょんと走っている。
急に視界が開け、広い雪原があらわれた。
「ここで火をおこそう」
と、 Gilbert は言ってバックパックをおろした。足元には、直径1.5mほどの、木の枝で作った巨大な鳥の巣のようなものが。
「ビーバーの巣だよ。古いもので、もう連中はここには住んでないけどね」
と Gilbert 。エッ、ということは、私達が立っているここは、川なの?!
ビーバーの巣
そういえばTABIはさっきから、何やら懸命にあちこち掘っている。凍った川の底にいる魚のニオイがするんだろう。川の真上でキャンプファイアーなんて、生まれて初めてだ。
驚いている私達の前で、 Gilbert はさっさと集めた小枝を組んで火をおこし始めた。空き缶に針金をつけた簡易ヤカンに水を入れ、枝を組んだものにひっかけ、お湯をわかす。紅茶のティーバックや薬草を入れて、お茶ができるのを待つ間、 Gilbert はミックマックのお婆さんがつくったキャンディーやジンジャークッキーを食べさせてくれた。TABIもお腹が空いているので、クッキーをいただく。
お湯はびっくりするほど早く煮立った。
ファイアーを囲むように座り、お茶をいただきながら Gilbert
のサバイバル術の話を聞いた。
ハイク中に天候が悪化し、ここで一晩過ごすことになったらどうするか?彼なら、適当な場所に穴を掘り、風除けをして吹雪が止むのを待つ。また、このあたりは野生のムース(大ヘラジカ)が多い。一頭を仕留め、内臓を取り出し、その体内に寝袋にくるまるように体を隠して体温の低下を防ぎ、生き延びることもできるという。
私達は火とお茶ですっかり体が温まったが、気がつくとTABIは雪だるま状態でガタガタ震えている。走っている間は良かったが、立ち止まると体温が急激に低下するのだろう。やっぱり犬ぞり犬と、TABIのような都会のもやしっ子では違う。そばにある倒壊した木を利用してアジリティーの練習をし、体を動かしてやったらTABIもようやく震えが止まり尻尾を振って元気を取り戻した。
野生動物の足跡
帰り道、 Gilbert はあちこちを指差し
「ほら、あれがウサギ、これが鹿の足跡だよ。通りすぎたばかりだね」
と教えてくれるが、私達にはどれがどれだかさっぱりわからない。ムースも通ったようだが、犬を連れていたためか姿をあらわさなかった。
ハイクのあと、 Gilbert
のお宅にお邪魔して奥さんが用意してくれたご馳走をいただく。TABIママがハーブや漢方・薬草にとても興味があることを知り、
Gilbert
はいろんな秘蔵の薬草を出してきて味見(?)させてくれた。今は雪に埋もれて見えないが、私達がハイクに行った山は薬草の宝庫なのだという。
「天然バイアグラと呼ばれる薬草も、あっちこっちに生えてるんだよ」
と Gilbert は言って笑う。
祭事用の太鼓
それから Gilbert は、ミックマック族の伝統儀式を見せてくれた。ムースの皮で作った大太鼓をたたきながら、客人を歓迎する歌を歌う。
TABIパパは、祭事用のかぶりものをかぶせてもらい、すっかりミックマックになりきっている(ウソウソ)。こうした祭事用のあれこれの道具は男性専用のもので、聖域とされており女子供は本来は触ってはいけないのだそうだ。なんだか日本の古い風習とよく似ている。それだけでなく Gilbert
の話を聞くうちに、ミックマック族と日本の古い風習がとてもよく似ていることに気付き、お互いなんだか遠い親戚のような気がしてきた。
「古代、日本と北米は陸続きで、ネイティブ・アメリカンと日本人は同じ祖先を持つ」
という説をたてている人がいるが、それもあながちデタラメではないのかもしれない。
楽しい話はつきなかったが、私達はおいとまする時間となった。また夏には夏のハイクがあるそうなので、今度は深緑の季節に再会することを約束し、 Gilbert のお宅をあとにした。
Native Interpretation : 今回のガイド料は$50
(2002年2月10日)
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