雨の中お祭りへ
(2000年9月16日)
さよならボーダー |
目が覚めると、外は霧雨。
テレビの天気予報では、雨は午後から激しくなるといいう。早めに出て、予定どおりのコースを行ってみることにした。
「ワンワン」
外の犬の声にカーテンを開けると、Em(B&Bの奥さん)が赤ちゃんをバギーにのせ、犬4頭と一緒にお散歩に出かけるところだった。今朝もまた犬たちと遊べるかもしれない。TABIにエサと水をやりながら、急いで支度する。
ダイニングに降りてコーヒーとマフィンの朝食をとり、水筒にTABI用の水を入れる。外では犬たちが納屋の前に集まっている様子。TABIを連れて外に出る。
TABIパパを見ると、JESSIEがテニスボールをくわえて走ってきた。パパがボールを遠くへ投げる。5頭がそれを追う。今朝のTABIは、けっこう図々しい。真っ先にボールをつかまえ、他の犬から文句が出ても一向に気にしない。
「へっへー、先にとったものの勝ちだよ〜」
といったかんじ。なぜか、JESSIEもTABIのやりたいようにやらせている。
世界トップクラスのボーダーコリーと遊べるなんて、TABIはなんて果報者?いや、「チャンピオン」とか「メダリスト」などという人間の与えたタイトルなんて、犬にとってはたいした価値も自慢の種にもならないのだろう。彼らにとっては、トロフィーよりも一本の牛骨のほうが、ずっとありがたいのだ。人間が学歴や年収でお互いを判断してランクづけするように、犬も犬なりの判断基準でお互いをランクづけるが、その基準の中には「血統」とか「タイトル」なんてものは入っていない。「支配的」か「服従的」かを、嗅ぎ分けるだけだ。犬社会は、厳しく、わかりやすく、そして魅力的だ。
どの犬も、目をキラキラさせてボールに向かって思いきり走っている。永遠にこの時が続くといいのだが、我々は行かねばならない。TABIを車の後部にのせると、彼は窓から鼻先を出して犬たちの居場所を探す。4頭も、1箇所に集まってこちらをじっと見ている。
「また来るからね。また遊ぼうね」
とボーダーに声をかけ、エンジンをかける。バックミラーにうつる4頭が、次第に小さくなっていった。
ベッシーズシード |
(店の中は駄目)
ブラックレービーチを出てルート6をコーブヘッドまで走り、ルート25をまっすぐヨークまで。ここには、ガーデンセンター「ベッシーズシード」がある。
花の種や球根、ガーデニング用品やクラフトなど何でもそろう店。カタログやオンライン販売もしている。駐車場には、島内だけでなく、他州や国境を越えてアメリカからやってきた観光客の車がいっぱい。TABIママは、新しい花壇に植える早咲きの球根類を買いこむ。
TABIパパが車の点検をしている間、ママはTABIを連れてお散歩がてらここの名物「トライアルガーデン」を見学。
ハイウェイをはさんで店の向かいにあるこのガーデンでは、毎年新しい品種の花や野菜を試験的に育てている。その結果良好と見とめられた品種は、翌年のカタログにのる仕組みだ。雨にうたれてつやつやと輝く何百という種類の花の見事なこと。TABIはオシッコに忙しくて目に入らないようだが、ママはいつまでも花に見とれていた。
Vesey's Seeds
ファーマーズマーケット |
ヨークを出てルート25をまっすぐ。ルート2につきあたったらのりかえてまっすぐシャーロットタウンまで。ユニバーシティアベニューに入ると、左手に州立大学が見えてくる。ベルベデールアベニューで左折すると、「ファーマーズマーケット」のたて看板。すぐその先がマーケットの駐車場だ。
鉄道の駅だった場所を改築してつくったファーマーズマーケットは、毎週土曜日に開かれている。地元の野菜や魚介類、パンや肉、いろいろな屋台がところせましと並び、大盛況だ。一泊目に泊まった「ドクターズ・イン」のPaul も、ここでオーガニック野菜を売っているはず。だが、もう売れきれたと見えて、彼のブースはきれいに掃除した跡だった。残念。
海外にも名が知られている「メダリオン」のスモークサーモンの屋台で1パック買ってみる。ここはウィンズローに本店と工場があるが、マーケットのブースでも買える。もらったパンフには、日本の俳優・藤村俊二のコメント(「世界一の味」だそうだ)がのっていた。
「寿司レディ」というのれんを見つけ、のぞいてみる。フランス系カナダ人の女のコが海苔巻を売っていた。バンフに住んでいたとき、バンフのホテルで働く日本人シェフから作り方を教わったのだそうだ。
「かわりに私がフランス語を教えてあげたのよ。私はお寿司が作れるようになったのに、彼のフランス語はてんでダメ」
と笑う。カリフォルニア巻きと野菜巻きの2種類で、どちらも中巻き。1巻き8ドルとは高い!日本のお持ち帰り寿司の巻物の方がずっと安いではないか。切り売りもするというので、6切れ4ドル50セントのパックを買う。
けっこうオーガニックの屋台が多いのには驚いた。環境問題に力を入れている州としては、自然ななりゆきかもしれないが。玄米や番茶を出している屋台があったので、
「あなたたち、マクロバイオティック?」
と聞いてみる。
「そうよ、私の姉は、ボストンで勉強してきたの」
と、お鍋を洗いながら色白の若い女のコがうれしそうにニッコリと笑う。人気の屋台のようで、ランチセットは売りきれだったが、サラダが残っていたので買う。
「もうおしまいだから、全部あげるわ。ドレッシングも2種類あげちゃう」
ラッキー!TABIパパはレバノン人の屋台で揚げたてのファラフェルを買い、二人でテーブルでお昼。
Farmers' Market
100 Belvedere Ave., Charlottetown
626-3373
open: Sat. 9:00-14:00
シェルフィッシュフェスティバル |
PEIでは毎年9月、島特産の貝類の業者協賛でお祭りをひらく。会場では、牡蠣・ムラサキ貝・蛤などとれとれの貝類や、ビール、チャウダーの屋台が並び、ライブバンドの演奏を聞きながら舌鼓をうつことができる。また、超人気の「牡蠣の殻むきコンテスト」も行われる。
会場は、ピークスワーフという、シャーロットタウンの船着場。お祭り会場付近は駐車スペースがないにちがいない、というTABIパパの懸念のため、とてつもなく遠いところ(会場まで歩いて20分以上)に駐車する。どしゃ降りの雨の中、TABIを連れ会場まで歩く。(実際には、駐車場は空いていた・・・)
会場のテントに入ると、
「入場料1人5ドルです」
と言われる。そんなこと、ガイドブックに書いてなかったぞ!まただまされた。しかも、食品を扱っているので、犬は入れないという。雨の中、TABIを連れて車に戻る。
TABIを車に残して再び会場に着くころは、二人とも服のまま泳いだようにびしょぬれ。スニーカーの中で水がチャプチャプ。
「おっ、犬を捨ててきたね!」
と、受付のおじさん。
「ズドンと一発で始末してきたよ」
と、パパがジョークをとばす。
屋台では、目の前でむいた牡蠣を3個3ドルで売っている。レモンを絞って、つるんと口の中へ。う〜、天国。潮の香りがなんともいえず。思わずもう一皿買う。
「お前、あれだけ昼飯食って、よく入るな」
とパパはあきれるが、そういう自分もチャウダーを注文している。
祭り2日目の今日は、PEI州の牡蠣殻むき名人がチャンピオンの座をねらう。最終日には、大西洋沿岸全州から集まった名人が、今日のチャンピオンを含めて、グランドチャンピオンを競うという。
会場全体が、舞台上の名人に注目する。親子二代で殻むき名人という若い女性から、殻むき40年というベテランまでいる。早い人は、3秒で1個だ。ヤンヤの喝采の中,結局ベテランはナイフを落として失点し、スクーターに乗って登場した若造にわずかの差でチャンピオンの座をとられてしまった。
Shelfish Festival
Peaks Wharf
368-2757
ショッピングモール |
きのう行き損ねたモールに寄ってみることにした。TABIママは、やっぱりプレザーブをもらって帰りたいのだ。それに、土曜日の今日は、駐車料金がタダだ。
1階の宝くじ売り場で、ガイドブックの1ページとひきかえにプレザーブを一瓶もらう。これもとっておいて、クリスマスにワインとともにあけよう。あらためてモールの中を見渡すと、小さいがそれほど悪くない。しゃれた店がたくさんあって、おみやげを買うにはもってこいの場所だ。観光客がたくさん買い物袋を下げて歩いていた。
Confederation
Court Mall
894-9505
家路へ |
プレザーブをもらって何も思い残すことはないので、あとはまっすぐ家路へ。
コンフェデレーションブリッジの料金所で、36ドル25セントを払う。
「さあ、お別れだよ」
TABIパパは言って、車の窓を開ける。TABIは、鼻先を外へ出して、PEIの風を嗅ぐ。TABIの白い足先は、赤土ですっかり赤く染まってしまった。
雨雲が少しずつ切れてきた。雨に始まり雨に終わった旅行だったが、楽しかった。後方に広がる赤土の大地が、次第にかすんで小さくなってゆく。
(2000年12月6日)
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