コンディショニング
〜安全に遊ぶために〜

 

あなたは、Weekend Warrior Syndrome を患っていないだろうか? 月金はオフィスでデスクワーク、週末だけテニスだ、スキーだ、ゴルフだと出かけ、筋肉痛や捻挫など突然の怪我で痛い思いをする…。普段の運動不足を解消しようとスポーツに参加するのは良い事だが、なまった体でいきなり激しい運動をするのは百害あって一利なしだ。

プロやオリンピックの運動選手は、トレーナーについてコンディショニング・プログラムを消化し、体をつくっていく。怪我を防止するためにも、大切なことだ。フットボールの選手は、なにも毎日フットボールだけプレーして済ましているのではない。ウェイト・トレーニングやランニングなど、ターゲット・スポーツのスキル・トレーニング以外に様々なエンジュランスをこなしている。スキーヤーは、夏のオフ・シーズンにはランニングなどをプログラムに入れ、コンディショニングに努めている。

犬も、スポーツをするにあたっては同様のことが言える。

「うちの子は活発だから、大丈夫」と言う人がいるが、活発であることと体ができていることとは全く別の問題だ。普段はお留守番で一日中昼寝、日曜だけ引っ張り出してアジリティ・コースを走らせたりしたら、犬の体を壊してしまう。また、ドッグスポーツはハンドラーである人間にもアスレチック能力を要求する。犬をコンディショニングする過程が自分のためのコンディショニングにもつながり、ハンドラー側の怪我を防止するのに役立つ。

以下は、アジリティやフライボールに参加するにあたり、トレーナーから「これだけは最低やるように」と渡されたコンディショニング・プログラムである。参考までに。

もちろん、ドッグスポーツには様々なものがあり、種目によって鍛える筋肉が違うしコンディショニングも異なる。以下はアジリティおよびフライボール犬に適したコンディショニングであり、他のスポーツに参加している場合はそれぞれトレーナーにアドバイスを受けるべきだ。しかし基本的な準備運動は、どのスポーツにも共通するものだと思う。

paw4.gif (869 bytes)ストレッチング(柔軟性)

ストレッチングは、トレーニングの前後にそれぞれウォームアップ、クールダウンとして必ず行う。また、競技に参加している場合は、順番を待つ間に行って体をほぐす。うちは普段でも、散歩に出かける前に行っている。とくに冬の厳寒期は、外へ出る前に体をほぐしておくことは非常に大切である。

ところで、「ウォームアップ」を字義どおりとって、外気温が高い時には必要ないと認識している人がいるが、それは間違い。ウォームアップとは、体を動かすことによって血液の流れを活発にし、循環系・神経系・筋肉・関節をスポーツをするのに適した状態へ準備することである。従って、たとえ汗をかくような日であっても、ウォームアップは必要だ。

  1. ストレッチ・ボウ
    犬の頭と前足を地面につけさせ、伸びをさせる。
     
  2. 回転
    犬が自分の尻尾を追うようなかたちで、右回り、左回りにくるくる回る。左右同じ回数を回すこと。
     
  3. ジャンピング・アップ
    犬は二本足で立ち、ハンドラーの胸(大型犬なら肩、小型犬なら膝あたり)に前足をかける。ハンドラーは、犬の背中や肩をマッサージする。
     
  4. ランニング
    ウォームアップでは、犬をハンドラーの横につけさせ、早歩きから次第にスピードを上げて短時間走る。クールダウンでは、逆に徐々にスピードを落として普通歩行する。
     
  5. 二足歩行
    犬は後ろ足だけで立って数歩進む。
     
  6. タグ
    ロープなどのオモチャを使い、引張りっこをして遊ぶ。

なお、トレーナーによってはストレッチングの際、犬の手足をハンドラーがつかんでひっぱる動作をとりいれていることがある。しかし、獣医によればこれは怪我をまねきやすいという。犬は、ひっぱられると本能的にひっぱり返すので、手足を痛めてしまうことがあるからだ。犬が自分の力で自然に体をストレッチするようにしむけたほうが、より安全だと思う。

paw4.gif (869 bytes)パワー(体力)

これらトレーニングは、すでに体のできた成犬向きである。成長途中にある子犬はやってはいけない。

  1. ハイジャンプ
    犬の肩の高さにハードルを設定し、跳ばせる。
     
  2. レトリーブ
    階段や急な斜面を利用し、ボールやオモチャ(フリスビー不可)を投げて犬に駆け上ってとってこさせる。犬が疲れてきたら止める。
     
  3. ウェイトプル
    専用ハーネスをつけ、犬にタイヤなど重量のあるものを引かせる。犬が疲れてきたら止める。
     
  4. ランニング
    深く積もった雪、砂浜、浅い川などを一緒に走る。犬が疲れてきたら止める。
paw4.gif (869 bytes)エンジュランス(耐久力)

以下のうちどれか一つを、毎週のコンディショニングに組み込み、一回最低20分行う。

  1. 水泳
     
  2. ロードワーク
    飼い主のサイクリングやジョギング、スクーターに伴走する。アスファルトを走る際には、パッドの損傷に注意すること。犬用スニーカーが重宝である。
     
  3. 他の犬と遊ぶ
    公園などで犬同士遊ばせる。体当たりが好きな子は要注意!怪我の元だ。
     
  4. フラット・レトリーブ
    平らな草原などで、ボールやオモチャを投げてとってこさせる。キャッチの際に犬が体をひねったり、高く跳んだりしないよう注意が必要。従って、うちではフラット・レトリーブではフリスビーは使わないか、投げても高く飛ばないよう、犬の頭の高さを限度としている。
     
  5. ハイキング
    森や山を飼い主と一緒に散歩する。
paw4.gif (869 bytes)アジリティ(敏捷性)

以下は道具が必要だが、たいしたものではないので庭や物置にあるもので代用できるだろう。

  1. キャバレッティ
    これは馬術競技の世界では有名だが、犬の場合もムーブメントのトレーニングに使う。初めは、犬の体高と同じ間隔にPVCパイプを並べ、犬にトロットさせる。さらに、パイプをサークル状に並べ、右回り、左回りでトロットさせる。 慣れてきたら、パイプの間隔を次第に大きくしていく。こうすることで、リーチを拡げ、ストライドを長くすることができる。
     
  2. プランクウォーク
    地上30センチくらいの高さに設定した約2メートル長さの板の上を歩かせる。コンクリートブロックで板を支えたものでもよいし、丸太や倒木があれば利用してもいいだろう。
paw4.gif (869 bytes)リフレックス(反射能力)

以下は、犬との遊びとして毎日できる。

  1. ボール投げ
    犬の頭の高さを限度にボールを投げてとらせる。犬に向かってまっすぐ投げたり、左右に投げたり、スピードも様々に変えてやってみる。
     
  2. ロープ付きボール
    上と同様。ロープが付いていることで、ボールの動きが変わる。タグで遊ぶこともできる。
paw4.gif (869 bytes)終わりに

コンディショニングを真面目に2年もやると、やっていない普通のペット犬に比べて犬の体が全く違うのが実感できる。余分な脂肪がないし、 正常に発達したしなやかな筋肉を持つ犬は、走ったり跳んだりする姿が自然で美しい。

コンディショニングは地味なため、軽視されがちだ。しかし、どのスポーツも基礎体力なくして良いパフォーマンスは期待できない。さらに繰り返すが、コンディショニングは怪我防止のために必要不可欠だ。また、とくに競技スポーツに参加していなくても、コンディショニングを行うことで犬の運動不足が解消できる。

一日30分程度でかまわない。あなたも、犬と一緒に体力作りに挑戦してはいかがだろう。

(2005年1月15日)

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