CGCテスト
(2005年12月12日)

CGC合格証書
TABIの合格証書

paw2.gif (869 bytes)アメリカでのお受験

CGCCanine Good Citizen…良き市民としての犬、のような意味テストは、 アメリカン・ケネルクラブ(AKC)が行っている、いわば「犬のお行儀テスト」である。純血種・雑種のいかんを問わず受験することができるという、AKCにしては異色のプログラムである。テストはケネルクラブにより認定された検査官のもとで10種類行われ、10種全てに合格点をとった犬のみが合格証書を与えられ、CGCとしてケネルクラブに登録される。CGCとして認められるということは、犬が家庭内のみならず公的な場においてもマナーの良い犬として行動できることを証明する。CGCはまた、多くのセラピードッグ団体においてセラピー訓練やプログラムに参加する際に必須資格とされている。

カナダからアメリカに引っ越した年の冬、TABIはこのテストを受験し合格した。どのようなテストなのか、その様子をレポートしよう。

CGCテストの存在は、TABIが子犬幼稚園に通っているころから耳にしていた。カナダのアジリティのトレーナーがセラピーワークにも熱心だったことから、いつかはセラピーワークに参加するためにテストを受けてみたいと思っていた。しかし、当時住んでいた所ではテストが行われていなかったため、アメリカ転勤が決まったときには「あっちで是非お受験しよう!」と心に決めた。引越しのゴタゴタが落ち着き出した秋に、私はまずAKCのサイトなどから自分の地域の検査官を探し出し、電話でインタビューしてみた。その中で「この人なら」と思った一人に再度連絡をとり、彼女の模擬試験クラスに参加することにした。

CGCテストは地域にもよるが、年に何度か行われる。検査官に連絡をとって受験料を払い、受験する。落ちても、基本的には合格するまで何度でも(もちろんそのたびに受験料を払って)挑戦できるらしい。しかし、やはりテストは一発で受かりたいのは人情。模擬試験クラスでは本番のテストと同じ内容を体験できるし、本番ではクラスで一緒になった犬が顔を合わせることになるので、慣れた雰囲気の中でリラックスでき合格しやすい。ま、「ズルしてる」と言われればそれまでだが、受かってしまえばこっちのものだ。

クラスに参加するにあたり、検査官のDeniseはまず30分以上に及ぶ電話でのインタビューでこれまでの犬の訓練状況(カナダでどのトレーナーに指示したか、なども)や行動について細かく調べた。さらに、2ページに及ぶ犬の家庭環境調査票(どこで犬を手に入れたか、日中は犬はどこで過ごすか、過去に問題行動を起こしたことがあるかなど)を提出しなければならなかった。クラスの他の犬は、彼女の訓練学校で子犬のころから一年にわたり基礎服従訓練とクリッカー訓練を続けており、CGCは卒業試験のようなもの。そこへ飛び入りするTABIの性格を事前に把握することは、 クラス全員の安全のために重要だったのだろう。これだけ真面目なトレーナーなら、信頼できると思った。

さて晴れてお入学となり(笑)、クラスでは実際のテストについて説明を受けた。クラスは少人数制で、6頭までと限っている。CGCテストは服従訓練競技と違い、コマンドを繰り返しても良い。要は犬がハンドラーのコントロール下にあることを示せば良いのだ。といっても、クラスのほとんどは1歳か2歳のまだやんちゃ盛り。当時5歳だったTABIは落ち着いて見えたらしく、周りから「いいわねえ、テストなんて楽勝ね」などと声をかけられる。いやいや、そんな簡単には…

paw2.gif (869 bytes)テストの実際

1989年に始まったテストだが、その後何度か内容が変ったらしい。今後も変るかもしれないが、少なくとも2005年度の10種のテストとは、以下のようなものである。 ハンドラーは犬に様々なコマンドを与えたり褒め言葉をかけても良いが、テスト中にオモチャや食べ物を犬に与えてはならない。

第一次テスト:他人との遭遇

知らない人が近づいたときに犬がどう反応するか、を見る。検査官のアシスタント(犬は連れていない)が近づき、ハンドラーと簡単に挨拶をし、握手をかわす。このとき犬は立ったままでもいいし、コマンドを与えて座らせてもいい。犬はアシスタントに興味を示してもいいが、おびえた様子を見せたり、飛びついたり、攻撃的になったり(吠える、うなるなど)したら不合格。

第二次テスト:おとなしく座ってなでてもらう

一次テストの続きで、犬はハンドラーの横に座ったままで、アシスタントが犬の頭や体をやさしくなでる間、おとなしくしている。犬はアシスタントに興味を示してもいいが、おびえた様子を見せたり、飛びついたり、攻撃的になったり(吠える、うなるなど)したら不合格。

第三次テスト:犬の健康状態のチェックとグルーミング

二次テストの続きで、犬はハンドラーの横に座ったまま、アシスタントが犬の耳の中や前足の状態をチェックし、ブラシで犬の毛をとかす。このテストの目的は、ハンドラーが犬の衛生状態や健康状態を常にチェックしてベストの状態に保っているか、つまり飼い主として当然の責任を果たしているかを見ることが一つ。もう一つは、獣医やグルーマーなど他人が体を触れる事に対し犬がどう反応するかを見ることにある。ブラシは、いつも家で使っている犬が慣れているものを持参してよい。犬はアシスタントに興味を示してもいいが、おびえた様子を見せたり、飛びついたり、攻撃的になったり(吠える、うなるなど)したら不合格。

第四次テスト:リードつきで歩く

外に出て、リードをつけて歩く。検査官は、途中で何度かターンや一時停止するよう声をかけるので、それに従う。このときのリードは普通のフラットリードで、ジェントルリーダーやフレキシーは使用できない。犬は必ずしもハンドラーの左側でなくても良いが、リードを引っ張ったりあばれては不合格。

第五次テスト:人ごみの中を歩く

公的な場で犬が落ち着いて歩けるかどうかを見る。数人のアシスタントが行き交う中、ハンドラーは犬にリードをつけて検査官の指示する方向へ歩く。犬はアシスタントに興味を示してもいいが、おびえた様子を見せたり、飛びついたり、攻撃的になったり(吠える、うなるなど)、リードをひっぱったりしたら不合格。ハンドラーは犬に声をかけたり、コマンドを与えてコントロールしてかまわない。

第六次テスト:コマンドをかけて犬を待たせる

検査官の指示で、犬に Sit または Down のコマンドを与え、その場で Stay させる。それからハンドラーは犬を残し、20フィートほど離れて犬と向き合う。犬がその場を離れたら不合格。

第七次テスト:呼び

六次テストと似ているが、今度は犬と向き合ったハンドラーが Come とコマンドし、犬を呼び寄せる。

第八次テスト:よその犬への反応

犬が知らない犬に対しどう反応するかを見る。ハンドラーと犬、アシスタントとその犬が15フィートほど離れて向かい合い、中間地点で近づいて止まり、挨拶をし、握手をかわす。そしてお互い前方へと歩き出し、離れる。この間、犬同士は興味を示してもいいが、おびえた様子を見せたり、飛びついたり、攻撃的になったり(吠える、うなるなど)したら不合格。

第九次テスト:刺激に対する反応

ハンドラーと犬が一緒にいるところへ、アシスタントが近づいて荷物を落としたり、大きな音をたてたりする。松葉杖やサングラスなどで変装して近づいたり、ジョギングしながら通り過ぎたりする。犬はアシスタントに興味を示してもいいし、音に対してちょっとびっくりしても良いが、おびえた様子を見せたり、飛びついたり、攻撃的になったり(吠える、うなるなど)したら不合格。これはセラピーワークをする際に必須のテストで、病院など犬にとっては見慣れない異様な医療機器がある場所で犬がパニックしないかどうかを見るのが目的。

第十次テスト:ハンドラーとの分離

屋内でのテスト。まず、アシスタントはハンドラーに「犬を預かりましょうか?」などと声をかける。ハンドラーはアシスタントに犬のリードを渡し、その部屋を離れ てドアを閉め、別のアシスタントが指示する場所 (犬から見えないところ)へ移動。3分後、犬のもとへもどる。犬はアシスタントに興味を示してもいいが、おびえた様子を見せたり、飛びついたり、攻撃的になったり(吠える、うなるなど)したら不合格。

お疲れさま!ここまで全部できたら合格。

全体的に見て、基本的服従が入っている犬なら決して難しくはない。これぐらいのことは、できて当然ともいえる。しかし、細かい点を見ると検査官によって減点される可能性はいろいろある。例えば、TABIにとって難しかったのは「フレンドリー過ぎてもダメ」という、このテストの特徴である。例えば、おとなしくなでてもらっている間に犬がアシスタントの顔をべろべろなめたらダメなのだ。日常ではありがちだし、犬は相手が犬好きかどうかわかるので、「この人なら顔をなめてもいいかも」と大喜びでべろべろモードになってしまう。これを矯正するには、Sit Stay コマンドで犬を動かさないようにするなどの工夫が必要だ。

また、物事に動じないTABIには楽勝だが、第九次テストは音に繊細な犬にとっては難しい。これがダメで不合格になり浪人中の犬もいる。「普段からいろいろな刺激に慣れさせるように」とはトレーナーのアドバイス。しかし、私が見るに犬は意外と平気なのに、飼い主がビビッてしまい、その感情が犬に伝わって犬がパニック、というケースが多い。飼い主が自分をなんとかしないといけないのだが、これがどうも難しいらしい。

さらに、第十次テスト、これは果たして必要なのかどうか。大体、突然知らない人に預けられてハンドラーがいなくなっちゃったのに、落ち着いてヘラヘラしている犬というのも考えものではないか。 簡単に誘拐されてしまいそうである。多少は不安になるほうが普通だと思うが、どうだろうか。

ま、とにかく模擬テストである程度自信をつけた私たちは、クリスマスに近い日に本番をむかえた。家でも二ヶ月間毎日練習したし、東京の実家は合格祈願のお守りを送ってくれた(爆)。私は受験戦争経験世代なので試験には慣れっこだが、自分の犬のお受験は初めてだ。ま、でもなるようになるだろうし、試験が終わったらピザのテイクアウト買って帰ろう、と軽い気持ちで試験場へ。

一組ずつテストするので、その他ハンドラーと犬は控え室で順番待ち。「どう、練習した?」「う〜ん、なかなか時間がとれなくて」などと、皆でお菓子を食べながらおしゃべりして気持ちをほぐす。実際に自分の番が来たら、あれよあれよという間に第一次から第十次まで終わってしまった。本当に考えているヒマもないほど早かった。そして、検査官から「おめでとう!合格よ」と評価票の写しを手渡される。早い!マークシート(古い?)みたいに、すぐ結果が出るのだ。合格記念のCGCバッチをもらい、予定どおりピザのテイクアウトを買って家路についた。

その後AKCに必要書類と手数料を送ると、合格証書が送られてきた。テストから一年、この春からは念願のセラピーワークに参加する予定である。CGCテストの内容は、セラピーワークに欠かせない必須なお行儀がほとんどであり、これに合格していることがハンドラーの自信につながるという。

「不合格になったからといってあきらめないこと。検査官は必ずどのテストに不合格になったか、どういう点が良くなかったのかを受験生に説明するので、次回はその点に注意して日常生活の中で気をつけ、練習すればいい」と、検査官。確かに、このテストのために練習することが、犬と飼い主のコミュニケーションの改善にもつながると思う。どうしてもテストに不安なら、CGC受験対策コースがあちこちの訓練学校で開催されているので、そこで勉強するのもためになるだろう。

お行儀の良い犬というのは、どこへ連れて行っても安心だし、どこでも歓迎される。セラピーやサービスワークを目標にしていなくても、基本的服従ができている犬ならば受けて損はないテストだと思う。なおテストの詳細や開催日時などは、各自ケネルクラブへ問い合わせるように。

(2007年1月20日)

クリッカー・ベーシックス

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