良いブリーダーとは

私たち夫婦は、TABIを迎える数年前に犬を飼うことを話し合った。
うちは子供を持たない主義なので、これからもずっと夫婦二人だ。でもペットぐらいいてもいいか、ということになり、猫は私がアレルギーで飼えないので、犬を飼おう、と決めた。
夫はロットワイラーのような強面の大型犬がいいというし、私は日本人だから日本犬、柴犬がいいとゆずらず、犬種に関してはなかなか合意を見なかった。

たまたま知人のアメリカ人で秋田犬のチャンピオンを飼っている夫婦がいた。
旦那さんの仕事関係で日本に在住時に、日本のブリーダーから子犬を手に入れたそうだ。
他にラブも飼っていて、犬関係に詳しく、私たちに様々なアドバイスをくれ、ブリーダーも紹介してくれた。
結果的には雑種の子犬をもらってしまったが、いい勉強になった。

それまで犬を飼った経験のなかった我々にとっては、驚くことが多かった。犬のブリーダーとは、ただ犬を繁殖して売るだけかと思っていたが、そうではなかったのだ。
もちろん、良心的なブリーダーとタチの悪いブリーダーでは、天と地の差がある。犬を入手する前にそれを知っているといないでは、犬との暮らしに大きな違いが出てくる。

これはカナダやアメリカでの話だが、読んで参考にしてもらえたら幸いである。

paw2.gif (869 bytes)ブリーディングでメシは食えない

良心的なブリーダーは、犬の繁殖でメシを食っていない。食えないのだ。

なぜか?
まず、彼らがその犬を繁殖するのは、その犬種に心から惚れこんでいるからである。売れ筋の犬を何種も繁殖する、ということはなく、一犬種を繁殖している。そしてそのスタンダードを向上すべく努力している。
素質ある子犬を選りすぐり、訓練し、ショーに出し…良質のエサ代、グルーミング代、かなりの金がかかる。家の中の一部屋を、犬用に改築して与えている場合もある。

純血種は遺伝性疾患が多いので、繁殖の前には詳しく検査をしなければならない。そして、関節ならOFAやPennHIPなどの証明書をとり正常である証拠を見せなければならない。
検査で異常が発見されたら、その犬は繁殖に使えない。どんなにいい犬でも、である。

これだけ金をかけて繁殖しても、生まれてくる子犬全てが健康で商品価値があるとは限らない。
また、買われていった子犬に問題があった場合は、引きとって世話をしなければならない。結局、収支は赤字かトントン、というのが普通だ。だから彼らは、弁護士、獣医などの本職を持っている。犬の繁殖は、あくまでサイドビジネスである。

私たちの知人で、グレートデンのチャンピオン犬をブリーディングしている夫婦がいたが、彼らもやはり夫はパイロット、妻はレストラン・ビジネスで共働きである。犬に人生の全てをかけているので、自分たちの子供はつくらない。収入の多くを犬につぎこみ、より高収入の職を求めて昨年他州へ引っ越していった。

paw2.gif (869 bytes)こうるさいブリーダー

良いブリーダーは、客のことを根掘り葉掘り聞きたがる。

あなたの職業、収入、家族構成、住環境、ペットの有無、犬飼い経験……
まるで就職の面接やお見合いのようだ。
そして、一番深く追求するのが、
「なぜこの犬種を選んだか?」
である。あなたの答えによっては、即座に
「申し訳ないが、うちの犬はお宅にむいていない」
と、断られてしまう。

日本から来たばかりの人は、これでカチンとくるらしい。こっちは金を払うと言ってるんだから、おとなしく売ればいいだろう、と思うらしいのだ。つい日本にいるときと同じように、札束で相手の顔を叩くようなことをしてしまう。

しかし、良いブリーダーにとって自分が繁殖した犬は、わが子のようなものだ。
あなたの娘が嫁に行くとき、相手の男やその家族のことなど何も調べずに出すだろうか?結納金もらったから何でもいいや、とアッサリ割りきるだろうか?

良いブリーダーは、子犬を一生かわいがってくれる人にだけ売りたいと思っている。もし何かの事情で世話ができなくなったら、捨てる前に返してほしい、とさえ言う。

そういうブリーダーに繁殖された子犬は、安心して育てられるのではないだろうか。

paw2.gif (869 bytes)良いブリーダーとは

では、良いブリーダーの見分け方とは何か?

以下にチェック項目をあげてみた。
カナダでも全部にあてはまるところは、なかなかない。ましてや、日本の事情は特殊だから難しいだろう。
だが、これらのポイントを頭にいれて探せば、きっとどこかで満足できるブリーダーが見つかるかもしれない。

  1. 子犬を買う前に、必ず見学に来るように言われる。それも、家族全員(子供も含めて)で来るように言われる。電話注文でお届け、なんてことは絶対に受け付けない。
    これは、どんな家族のもとに子犬が買われるのか、ブリーダーの方がしっかり確かめたいからである。
  2. 施設は清潔で、飼われている犬は繁殖犬も含め健康である。
  3. メス犬の体を気遣い、発情のたびに子を生ませることはしない。従って、今すぐ子犬が欲しいと言っても、2年待ち、3年待ちと言われることがある。「いつでも子犬がいます」というのは、パピーミルである。
  4. 遺伝性疾患に関して充分勉強しており、最低二世代(子犬の父母、祖父母)に関して必要な証明(OFA、PennHIPなど)をとっている。子犬購入時には、証明書のコピーを必ず付けてくれる。子犬を引き取ってからのちに、万一子犬に遺伝性の疾患が見つかったときは、いつでも返品を受け付けると契約書に明記されている。
  5. その犬種の良い点を宣伝するだけでなく、悪い点もちゃんと説明してくれる。
  6. 何かの理由で犬を飼えなくなったときには、捨てるのではなくブリーダーに返すよう約束させられる。
  7. 見学の際には、最低でも子犬の父・母、できれば叔父・叔母など血縁の犬を見せてくれる。血統を見せるのではなく、実際に犬を見せてくれる。
    これは、子犬の性格を知る上で大切なこと。親犬、とくに母犬の性格が子犬に多大な影響を与えるからである。血縁の犬が健康で性格が良ければ、その子犬もそうなる可能性がある。
  8. 犬種によって、服従・アジリティ・トラッキングなどの競技会に犬を出したり、セラピードッグなどとして活躍させている。
    なぜこれが大事かというと、何か「仕事」をさせられている犬というのは訓練が入りやすい証拠であり、その子犬も躾をしやすい可能性が高いからである。
  9. 犬はブリーダーの家族とともに遊んだり運動したりして、ふれあう時間を毎日必ず持っている。よって、そこの犬は人懐こく、ペット犬としていい犬になる性格をしている。
    ペットとしての犬を求めているあなたに、やたらとその犬の血筋の良さばかりを強調するブリーダーは要注意。そういう話でごまかして、血統はいいが性格が荒れていてどうしょうもない犬を売りつけようとする魂胆かもしれない。ショー・ドッグは外見重視で繁殖するために、往々にして性格が荒れてしまうことがあるという。
    「この子はショーに出そうと思ったけど、特別お宅にゆずりますよ」というのも大ボラ。ショー・クオリティの子犬を、ペット犬として一般家庭に売る(良心的)ブリーダーはいない。ショーに出せる犬とそうでない犬とでは、明らかに一線が引かれており、ショー用子犬は値段がはるかに高い。従って、値段をつりあげるためにわざと「この子はショー・タイプだ」などとありがたみを持たせているだけだ。
  10. 子犬を売る前に、獣医によるチェックアップがすんでいる。さらに理想的には、子犬一頭ずつマイクロチップが装着されている。
  11. ペットとして飼うのであれば、去勢することを約束させられる。これは、犬の人口爆発と無駄死にを防止するためである。
    Neuter/Spay Agreement (去勢契約書)にサインをし、子犬購入時にあらかじめ手術料を上乗せした料金を支払い、手術後に獣医による去勢証明書をブリーダーに提出し返金してもらう、というシステムをとるブリーダーがいる。

    ペット・クオリティの子犬は、購入時にLimited Registration (AKC)またはNon-breeding Agreement(CKC)にサインをして各クラブへ送付する。これは、あなたの犬はれっきとしたケネル・クラブ登録の血統書付きであるが、繁殖に使えないことを意味する。もし契約に反して繁殖した場合は、生まれた子犬はクラブに登録できない。

  12. 子犬を売ったらさよなら、ではなく、その後も様々な相談に応じてくれる。子犬の食事、トイレの躾など、初心者にはとくに親切に教えてくれる。

参考:CHOOSING A NEW DOG / PetEducation.Com
GOOD OWNERS, GREAT DOGS / Brian Kilcommons, Sarah Wilson 共著
Finding a responsible breeder

(2001年10月8日)

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