あなたしか見えない
I only have eyes for you

 

青年は犬をボートに乗せ、セーヌ川のまん中までこいだ。そして犬を川に投げ捨て、おぼれさせようとした。あわれにも犬はボートのへりにつかまろうとするのだが、青年は犬を水の中に押し戻す。そのうち青年はバランスをくずしてボートから落ちてしまった。
流されていく青年を見るや、この主人に忠実な犬は、青年を助けに向かった。岸から救助がくるまで犬は青年を水面に引き上げ続け、青年は命びろいをしたのであった。
(訳:TABIママ)

これは、MASSON著 "DOGS NEVER LIE ABOUT LOVE" に載っているエピソード。
もともとは、"ANIMAL BIOGRAPHY"(1840年発行の本、著者不明)に「フランスの新聞記事から」として掲載されていたものだそうだ。MASSONは、犬の寛大さ、残酷な飼い主のしうちに対して仕返しをするどころか、変わらぬ忠誠と愛情を示す驚くべき純粋さの例の一つとして、これを紹介している。

これを読んだとき、大学で受けた講義の一つ「アガペーとエロース」を思い出した。
TABIママの学校はキリスト教系で、宗教学が必修だった。とりあえず出席すれば単位がとれたので、授業のほとんどを覚えていないが、これだけはなぜか心に残っている。現役牧師でもある先生は、言った。
「エロースは、惜しみなく奪う愛。
アガペーは、惜しみなく与える愛。相手から見かえりを期待せず、ただ純粋に愛しつづけること。許すこと。神の愛は、アガペーなのです」

犬の飼い主に対する愛情も、アガペーと言えないだろうか。

こんなことを書くと、宗教学者の方から
「犬ごときと神とを同一に見るとはケシカラン」
とお叱りを受けるかもしれない。TABIママは、神を冒涜するつもりは決してないので、念のため。

犬の目は、まっすぐ飼い主のあなただけを見ている。
あなたと一緒にいること、あなたに喜んでもらえることが、犬の生きがい。
どんなにきつく叱られても、裏切られても、この世で一番好きなのはあなたなのだ。

参考:DOGS NEVER LIE ABOUT LOVE/Jeffrey Moussaieff Masson

(2001年1月5日)

眠れよい子よ

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