フライボールとは
フライボールは、カリフォルニアで1970年代に始り、またたくまに欧米に広まったドッグスポーツである。アメリカやカナダでは、NAFA (North American Flyball Association) による規定に従い、競技を行っている。小型犬から大型犬、純血種・雑種を問わず、どんな犬でも 参加できる。
フライボールは、リレー式団体競技である。
1チーム4頭の犬(と補欠2頭)で結成され、2チームずつ速さを競う。
競技では、ヘッドジャッジをはさんで反対側に相手側のレーンが設置される
スタートした犬は、4つのハードルを飛び越え、つきあたりに設置されたフライボールボックスを押す。ボックスにはテニスボールが入っており、犬が押すとボールが1つ飛び出るしかけになっている。犬はこのボールをくわえ、再び4つのハードルを飛び越えて戻る。
そして次の犬がスタートする。リレー式に4頭が次々にボールを持ちかえり(これをヒートと呼ぶ)、速いタイムを出したチームが勝つ。
ポイントとタイトル |
勝ったチームの各選手(犬)はそれぞれポイントを獲得することができる。
ポイントは、チームが1ヒートで出したタイムにより決まる。
1ヒートのタイム | ポイント |
32秒未満 | 1 |
28秒未満 | 5 |
24秒未満 | 25 |
各犬は、ポイント総数によりタイトルを得ることができる。
略称 | 正式名称 | ポイント数 | 賞のタイプ |
FD | Flyball Dog | 20 | 賞状 |
FDX | Flyball Dog Excellent | 100 | 賞状 |
FDCh | Flyball Dog Champion | 500 | 賞状 |
FM | Flyball Master | 5,000 | 襟章 |
FMX | Flyball Master Excellent | 10,000 | 襟章 |
FMCh | Flyball Master Champion | 15,000 | 襟章 |
ONYX | ONYX Award | 20,000 | 記章 |
FGDCh | Flyball Grand Champion | 30,000 | 記章 |
タイムとタイミング |
スタート/フィニッシュライン上にはセンサーが設置されているので、タイムの測定はオリンピック並みの精密さで、1/1000秒の差まで出すことができる。
現在、世界最高記録はカナダチームの15.887秒。ということは、1頭平均4秒未満で行って戻ってくるということだ。どうやってそんなに速くできるのか?
それには、こんなしかけがある。
まず、レース場にはレーシング・ライト(またはタイミング・ライト)と呼ばれる赤・黄・緑の信号がある。犬とハンドラーが位置につくと、黄の信号が点灯する。信号が緑に変わった瞬間に、犬はスタートラインを越えることができる。そこで、犬とハンドラーはスタートラインよりずっと手前で位置につき、信号が黄のうちに犬をスタートさせ、信号が緑に変わる瞬間にスタートラインを越させるのである。
こうすることで、犬は助走中にスピードを加速し、スタートラインを越える時には最大速度に達する。
もちろん、信号が緑になる前にラインを越えてしまったら、やり直しになってしまう。よってハンドラーは、自分の犬がどれだけ速いか、いつスタートさせたらタイミング良くラインを越えられるかを緻密に計算しなければならない。
さらに、1頭目がボールをくわえて戻ってくる時には、すでに2頭目が助走を開始している。そして、その2頭はスタート/フィニッシュライン上ですれ違う。こうすることで、走者交代時の時間のロスを防ぐ。
しかし、1頭目がフィニッシュするより先に2頭目がスタートラインを越えてしまったら、たとえそれがほんの紙一重の差であったとしても、赤い信号が点灯する。そうなると2頭目は、リレーの最後尾についてやり直さなければならない。
つまり、いかに犬が速くとも、ハンドラーのタイミングの計り方が悪ければ良いタイムは決して出ない。また、自分の犬がいかに速くとも、チームの他の犬が速くなければ、あるいはチームワークが良くなければ良いタイムは出ず、高いポイントも獲得できない。
この競技は、ハンドラーにも高い計算能力と反射神経の鋭さを要求する、なかなか奥の深いスポーツである。
フライボール向きの犬とは |
どんな犬でも参加できるとはいえ、他のドッグスポーツにも言えることだが適性のない犬に無理やり教えようとしたら、お互い苦労することになる。では、どんな犬がフライボール・ドッグ候補なのか?
エキスパートの意見で共通するのは走ること・跳ぶことが大好き、テニスボールで遊ぶのが大好き、そして何より飼い主が大好きで、飼い主がどこにいても追っかけてくるような犬である。
まあ走ったり跳んだりできなければ、この競技の場合何もできない。肥満・関節の異常など健康上の問題がある犬は、残念だが参加は無理だ。また、ボール遊びに全く興味がないようでは、トレーニングのしようがないというか、まずボールで遊ぶことから教えなければならないので大変だ。 カエルに背泳ぎを教えるような困難さはある。
最後の「飼い主追っかけ」だが、要するに「呼び」がきく犬ならOKだ。
フライボールは、スタート地点で犬を送り出す、つまりハンドラー(飼い主)から物理的に遠くへ離してしまう。ボールをつかまえたら、今度は逆にハンドラーのもとへ全速力で戻さなければならない。呼びがきかないと、犬はボールとともにどこかへ行ってしまい、リレーにならない。
飼い主が大好きで、追っかけてくる犬、呼びがきく犬というのは、つまり飼い主フォーカスの犬ということだ。フライボール・ドッグとなるのに最も重要なポイントである。
さらに付け加えると、社交性があり環境の違う場所でもある程度コントロールのきく犬であること。アジリティと異なり、フライボール競技はかなりハイなスポーツで、犬たちのテンションがかなり上がる。社交性の低い犬は、興奮して喧嘩などの問題を起してしまう可能性がある。
競技場で喧嘩を売った犬は、即刻退場になることがある。また、相手の犬に大怪我させるなど深刻な場合、NAFAに報告され生涯競技会出場停止処分になることがある。基本的な服従と、充分な社交性は、ここでも大切だ。
また、飼い主側もフライボール向きの人とそうでない人に分かれる。
まず、短気で結論を急ぐ人はやめといた方が良いと思う。フライボールは単純な競技だが、一連のシークエンスを教えるのは一朝一夕にはできない。こんなことして何になるの?というような単純なトレーニングを繰り返しながら、ひとつひとつ確実にステップを重ねて行く。「早く犬を走らせたい、競技に出たい」とあせりまくる体質の人は、ストレスがたまってしまうかも。
さらに、これは団体競技である。チームのメンバーとはいつも一緒に移動するし、遠征するときには同じホテルに泊まったりする。ひとと仲良くできない性格の人は、ちょっと難しい。また、勝敗は自分の犬の出来だけでなく、チーム犬全体の出来に左右される。チーム内の犬の失敗を太っ腹に許せる性格でないと、メンバーと軋轢が生じて居づらくなってしまうかもしれない。
俗に Flyball Fever と呼ぶが、一度このスポーツの魅力にとりつかれるとハマってしまい、足を洗うのが大変のようだ(笑) でも犬と一緒にスピード感を楽しみたいあなた、試してみてはいかが。
(2003年2月22日)
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