芝生の張替え

緑の芝生に白いピケット・フェンスは、幸せな家庭を象徴する表現としてよく使われます。が、芝生というのはメンテナンスが大変。少しでも手入れを怠ると雑草だらけになり、家の外観をそこねて近所から苦情が来ることも。そして、いくら手入れをマメにしても張替えをしなければならない時というのが必ず来ます。芝生というのは、とてもお金と手間のかかるものです。

我が家では、今年(2004年)の夏にフロントヤードの約半分を張替えました。業者に頼んでやってもらうことも可能ですが、ご近所ではみなさん自分でやっているし、うちでも夫婦二人でできました。その過程を紹介しましょう。

2年がかりのフロントヤード改修工事

我が家の場合、フロントヤードの道路に面した部分の地盤が沈んで大きなへこみができ、雨が降るたびに湖状態になってしまうのが悩みのタネでした。地下に排水パイプを通すなど大掛かりな工事をして修復することも可能ですが、もっと簡単に自分たちでできる方法を試すことに。ボブキャット(採掘のできる大型機械)をレンタルし、盛り上がった地面を削ってその分の土をへこんだ部分へ移動し、凸凹のないなだらかな地面にしました。フロントヤードの約半分、だいたい60フィート×20フィートほどの面積です。

そして造園用土でカバーし、芝の種を一面に蒔きました。ところが、鳥が種を食べてしまったりして発芽率が悪く、雑草の勢いの方が強くて緑の芝生とはほど遠い姿に。それが昨年の夏です。

張替え準備

そこで今年は、種を使わず芝生地を敷くことにしました。芝生地は高くつきますが、スピーディーに緑の芝生をとりもどすことができます。

まず、Safer's EcoClear (酢と同じ成分の、環境にやさしい除草剤)ではびこった雑草を退治。完全に枯れたら、根っこごと掘り起こして地面をきれいにします。ここまでするのに2週間がかり。

そして、造園用土でカバーします。造成地など石ころだらけの場所では9インチ厚さの土を敷く必要がありますが、張替えの場合は1インチ(約2.54センチ)あれば充分です。うちでは10ヤード(約7.6立方メートル) の造園用土を使用しました。なぜ土を敷くかというと、新しい芝が活着するには養分に富んだふかふかの土が必要だからです。

オーダーした芝生地が届くまでにタイミング良く地面を準備しなければならないので、天気予報をチェックして大雨の心配のない日を張替え日に選んだり、ローラーをレンタルしたり、必要ならば休暇をとったり段取りをしておきます。芝生地が届く前日に、造園用土を敷き平らにならしてたっぷりと水を撒きます。


土をならしたところ

張替え当日

張替えはたっぷり丸一日がかりの作業。芝生地が配達されるまで、早朝から作業を開始します。ローラーで土を平らにし、芝用スターター肥料を一面に撒きます。この肥料はリンが豊富で、新しい芝の根の成長を助けます。


肥料をまいているところ

芝生地は、このように厚さ5センチのカーペット状に切り取られたもので、くるくると巻いてあったり折りたたんで届きます。土がついているのでとても重く(一枚20キロぐらい)、持ち運ぶ時にちぎれないよう注意が必要です。また根が露出しているので乾燥に弱いため、作業中は日陰に置いたり水をかけたりして常に湿らせておかねばなりません。

フロントヤードの端から、芝生地を一枚ずつ敷いていきます。芝生地は敷くと縮むため、二枚目を敷く時にはつなぎ目に余裕を持たせ、両方を引っ張って端がこころもち重なるくらいにし、よく押し付けて隙間ができないようにします。二列目を敷く時には、レンガを敷くのと同じように互い違いに配列します。余った部分は、よく切れるナイフで切り取り、あとで隙間を埋めるのに使えるようとっておきます。

敷き終わるごとに、ローラーをかけて芝生地とその下の土がよく接着するようにします。これを怠ると、芝が活着せずはがれてしまいます。生地の間に隙間を見つけたら、芝生地の余りや土で埋めて生地の乾燥を防ぎます。

芝生地をオーダーする際には、庭を正確に計測して充分な量の芝生地を注文するのですが、どうしても足りない部分が出てしまうことがあります。実際の芝生地のサイズがバラバラだったりするためです。そういう時は、芝生地を買い足すか、その部分だけ芝の種を蒔きます。うちでは、Scotts Patch Masterを使いました。これは芝の種・肥料・マルチが一体になったスグレモノで、ハゲの部分をカバーするようにまいて水を撒くだけ。毎日水を撒いて一週間で発芽します。


青いのがPatch Master


10日後にはこのように

早朝7時から作業を始め、途中お昼と三時に休憩をとって、ここまで終わるとすでに夕飯の時間。疲れたけど、張り終わった芝生地を見ると満足感でいっぱい。

最後に、全体にホースで水を充分撒きます。芝が活着するまでの2週間は、絶対に乾燥させてはダメです。張替え当日は、夕方から翌朝までずっとスプリンクラーで水を撒き続けました。雨の日以外は毎日スプリンクラーを全開にして、芝生地の下の土20センチ深さまで充分に潤った状態に保ちます。また、湿った芝生地は踏まれると痛むので、子供や犬が入らないようロープなどで囲いをするといいでしょう。

張替え後

2週間後、芝生地をそっと引っ張ってみて地面にしっかりくっついているようなら、活着した証拠。根が下まで張っていることになります。

活着したあとも、最初の夏はスプリンクラーで頻繁に水撒きをして乾燥を防ぎます。水道代がすごいことになります。それでも、せっかく張替えた高価な芝生地をムダにするよりはマシでしょう。


スプリンクラーは必需品

活着した芝生が15センチほどに伸びたら、芝刈りをします。葉が痛まないよう、芝刈り機のブレードはよく研いで、雨で濡れた芝生は刈らないよう注意します。雑草はこまめに手で引っこ抜き、定期的に芝生用肥料を撒いて成長を助けます。

健康な芝生は、虫害や病害に強いと言われます。昔の人は芝生をビシっと短く刈り上げたものですが、今では芝生は最低でも3インチ(約7.6センチ)の高さを保つのが常識。あまり短い芝生は乾燥に弱く、すぐ虫や病気にやられてしまうからです。そして、刈った芝は集めて捨てるのでなく、そのまま置いて自然に分解させ肥料にします。刈りながら芝の葉をミンチにする装置がついた芝刈り機があると便利です。我が家のもそういう芝刈り機です。それでも余った分は、コンポスターに放り込んで肥料にします。

また、敷いたばかりの芝生にはちょくちょく水を撒きますが、すでに活着した芝生には週に一度充分に水をあげるだけです。あまり頻繁に撒くと、根が浅くなるからです。

芝生のメンテナンス

ここまで労力とお金をかけて完成した芝生ですから、メンテナンスをしっかりして美しく保ちたいもの。業者に頼めば、庭の面積にもよりますが 、普通サイズのフロントヤードで日本円でひと夏約10万円ほどで、基本的メンテナンスはやってもらえます(今回のような工事は、全く別料金)。

ご近所でもお向かいさんなど、老夫婦二人だけのうちでは毎年業者に基本的メンテナンスを依頼し、あとはご主人が芝刈りをしているようです。メンテはお年寄りには重労働なのです。カナダでは、定年退職した夫婦がせっかく美しい庭のある一戸建てを売却して狭いアパートへ引っ越すことが多いのは、夏のメンテと冬の雪かきが肉体的にも経済的にも負担になるからです。

では、虫害や病害のない芝生のメンテナンスとはどのようなものか、ポイントをあげます。なお、これはカナダ大西洋岸のメンテです。

4月または5月(雪解け後)

*酸性土を中和するため、一面に石灰を散布する。(PH6.5が理想)
*コケを退治する。
*熊手で地表面全体を充分かきならす。
*エアレーターを使用し、地面に無数の穴(直径2センチ、7センチ深さ、7センチ間隔)を開けて通気をつける。
*ハゲた部分やうすくなっている部分に土を敷き、芝の種を蒔く。
*芝用高窒素肥料を散布する。

6月

*雑草をこまめに退治する。
*春用肥料を散布する。

7月から8月

*定期的に芝刈りをして、芝を3インチの長さに保つ。
*雑草をこまめに退治する。
*夏用肥料を散布する。
*週に一度、充分に灌水する。

9月または10月(霜のおりる前)

*雑草をこまめに退治する。
*酸性土を中和するため、一面に石灰を散布する。
*ハゲた部分やうすくなっている部分に土を敷き、芝の種を蒔く。
*秋用肥料を散布する。

以上は、毎年必要最低限のメンテナンス。虫害や病害がある場合、もっとこみいった治療が必要です。また冬の間は、雪を融かすために道路に大量に塩が撒かれるため、道路に面した部分(約1メートル幅の帯状の部分)の芝生がとても痛みます。さらに、除雪車が吹き飛ばした雪が2〜3メートルの高さに積み上がるのも同じ部分のため、たいへんな重みがかかり、ダブルパンチ。春にハゲハゲになるのは、この部分が多いようです。

さらに、メンテ用具である芝刈り機などのメンテも必要だし、緑の芝生ってほんっとたいへん!

芝生よ、さらば

メンテの大変な芝生なんか、もうイヤ!ということで、芝生を全部はがしてフロントヤード全体を花壇にしてしまったお宅もけっこうあります。それほど広くないフロントヤードの場合、確かに芝刈り機をゴロゴロ納屋からひいてくるのも面倒だし、同じ手間とお金をかけるならきれいな花を咲かせたほうがいいですよね。

家を売る予定のない場合は、それもひとつのアイデアでしょう。ただ、家を売る際にはどうしても「緑の芝生」のある家じゃないとなかなか買い手がつかないようです。固定観念って強いですね。

(2004年8月9日)

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