2008年
Leave room in the garden for the fairies to dance.
フロントは花の楽園
三年目ともなると私達の苦労が実を結び、芝生も花壇も生き生きと輝き始めました。庭師は定期的にやってきて芝生の手入れをしてくれるのですが、「ずいぶん芝が丈夫になったね」とほめてくれました。私はこの地域の典型的な色彩に乏しい花壇の様子が嫌でたまらなかったので、カラフルな花を豊富に散りばめ、鳥や蜂、蝶が遊びにやってくる楽園化を目指しました。「日照りと乾燥のひどいこの地方では無理」とも言われたけど、やってみたらホラ、こんなに綺麗に花盛り。宿根草は大きく育ち、一年草は毎年こぼれ種で増えて、みな楽しそうに花壇を彩っています。私達夫婦は、夕方ベンチに腰掛けてレモネードを飲みながら、青い芝生や色とりどりの花を眺めて過ごすのでした。
フロントのロックガーデンは花盛り
春夏秋と次々に様々な花が咲くうちのフロントヤードは近所で評判となり、通りがかりに車を停めて眺めてゆく人も。そして驚いたのは、いろんな不動産エージェントが「家を売りませんか?」と続々とやって来るようになったのです。「お宅は Curve appeal が最高。売りに出したら、一日で売買成立すること請け合いですよ」などと言って、みな名刺を置いていくのでした。Curve appeal とは、家と庭を真正面から見た時の第一印象のことで、買い手はこれを見て十秒以内にその家を欲しいかどうか決めてしまうのだと統計で出ています。まあもちろん、誰だって家の中も見てみないことには確かなことは言えませんが、それだけ第一印象が大事だということですね。
「うちは転勤族で、いずれカナダに帰るので」と断るのですが、「それは残念。でも、気が変ったらいつでも連絡して」と名刺や会社の名前が入ったコーヒーマグなど、いろんなものを置いていきました。うちの犬は、そうしたエージェントが来るたびなでてもらったり遊んでもらい、大喜びでした。
夜に咲くムーンフラワー。
翌朝にはしぼむ、一夜だけの美しさ。
ある日の午後、花盛りのフロントヤードでの出来事。私たち夫婦と犬は芝生の上で遊んでいると、何か鳥のようなものが飛んできました。花の上にとまったところをよく見たら、鳥じゃなくて蝶!羽を広げると1 5センチにもなる、Western tiger swallowtail (トラフアゲハ)だったのです。こんなに大きくて美しい蝶を見るのは滅多にあることではないので、夫はカメラを持ってきてそっと撮影。写真はピンクの撫子の蜜を吸っているところですが、花の大きさと比較するとこの蝶がいかに大きいかがわかるでしょう。
トラフアゲハ蝶
蝶は、満開の花々を渡りながら蜜を吸い、バードバスで水を飲んだりしてしばらく私たちを楽しませてから、青空へと飛び立ってゆきました。
バックヤードは美味しい憩いの場所
バックヤードに設けたスクエアフット・ガーデンは、たくさんの新鮮な無農薬野菜を供給してくれました。とくにミニトマトは大豊作。食べ切れなくて、お隣にも裏にもたくさんおすそわけ。
トマトの山、山、山
1平方フィートに16本のラディッシュ!
ハーブ類も大きく育ち、バックヤードで食事をしながらちょっとミントやレモンバームをつんでお茶に、などと新鮮なハーブをふんだんに使うことができるようになりました。また隅っこにあった砂場は、私の提案で「スカボローフェア・ガーデン」へ変身。歌にあるように、パセリ、セージ、ローズマリーとタイムを植えてみました。おまけで鉢に植えたスペアミントも仲間入り。夏中、このハーブも料理に飲み物にと大活躍でした。
スカボローフェア・ガーデン
犬友達を呼んで、 夕食はバックヤードで庭をながめながらBBQ。そして食後は、庭にある暖炉に火をくべて星空を眺めながらおしゃべり。犬たちは、涼しい空気とやわらかい芝生に思わずスヤスヤ。 こんな夏の夜は、時間のたつのも忘れてしまうほど。
外の暖炉は、夜になるとぐっと下がる山の気候の必需品
豊作の秋
この年は 庭の果樹がとても元気良く、たくさん花が咲きたくさん実がなりました。昨年驚くべき量の実をつけた桃の木が、今年も昨年の量まではいかないまでもかなりの実をつけました。こちらの桃は、普通は実をたくさんつけた翌年はお休みするそうですが、どういうわけか我が家では今年も大豊作。桃、梨、林檎と三種の果物でキッチンはあふれかえり、お友達や近所におすそわけしたり、パイを焼いたり冷凍したりと大忙しの美味しい秋でした。
美味しい桃がたくさん
大きな梨の実
冬が来る前に
芝生は短く刈って、きれいに整理しておきましょう、という教訓。
犬って芝生の上でゴロゴロ転がり!が大好き。うちの犬もよくやってます。うちは一切農薬を使わないので、青い芝の上でなら問題はないのですが。
ゴロゴロ…う〜ん、気持ちいい!
今年の秋は、夫がバックヤードの芝を伸ばし放題にしたままなかなか手をつけようとせず、そうこうしているうちに霜が降りてしまいました。そうなると、もう芝刈りは無理。夫は「来年の春になったらちゃんときれいにするから」と言ってたのですが…。伸びた芝が枯れると、まるでホウキみたいな乾いた黄色いトゲトゲになります。その上で犬がゴロゴロすると、もう大変!体中に枯れ芝がくっついてハリネズミのようになってしまうのです。その状態でドッグドアから家の中へ入ってくると…。
ただいま〜
せっかく掃除機をかけてきれいにした床の上が、ちくちくした枯れ芝まみれ!犬は、ブラシがけでは枯れ芝が切れるだけで取り除けないので、掃除機のノズルを直接あてて吸い取るしかありません。本犬は困った顔をしてますが、こっちだって楽しんでやってるわけじゃないんですよ。
パパに掃除機がけされるTABI
この掃除機攻めに懲りて犬が二度とゴロゴロしないか、というと大間違い。翌日また!本格的な冬が来て芝が雪で覆われるまで、この枯れ芝バトルは毎日繰り返されたのでした。
またいつのまに!
庭の手入れで忙しく、写真を撮っているヒマがあまりなかったのですが、思い出に残る花々を少しだけ。
矢車草 | さやえんどうの花 | セージの花 | オレガノの花 | ハルシャギク | セージの仲間 |
ブランケットフラワー | ラムズイヤー | グローブフラワー | マーガレット | ピンクウェイブ | 名無し薔薇 |
ホワイトウェイブ | 紫ウェイブ | チューリップ | チューリップ | 手毬? | キク |
東京の桜
親の緊急入院の知らせで東京の実家へ帰ったのは、三月の末。そろそろ桜が咲き始める頃でしたが、その後もずっと病院と家の往復でとても花見どころではありませんでした。
実家のぼけ
病院の庭の沈丁花
ある日、いつものように駅から病院までのバスに乗りました。あとから父と同じ年恰好の元気なお爺さんが、明るく運転士さんに声をかけながら乗り込んできました。お昼過ぎのバスは空いていて、乗客はほんの数人。お爺さんは席につくと、「ああ、今年も桜が咲いたなあ」。その声で我にかえった私は、窓の外をふと眺めてみます。すると、バス通りの両わきの桜並木がピンク色に染まっているではありませんか。私はお爺さんの方へ振り向いて、「綺麗ですねえ」と答えました。上品な白髪の老婦人が、「七分咲きですかしらね。見事ですこと」と、微笑みながら声をかけてきました。これが私の、今年の花見でした。
桜並木
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