純血犬か雑種か

"A dog is a dog is a dog."
と、トレーナーや獣医など専門家もよく言う。「血統がなんであれ、犬は犬だよ。みんな同じ」という意味だ。
確かに、犬同士で遊んでいるのを観察すると、出自など関係ないようだ。差別しているのは人間の方である。

純血犬も雑種も、それぞれに魅力と欠点がある。どちらを選ぶかは、やはり最終的には好みの問題だが、自分の環境などと照らし合わせてよく考えよう。

paw2.gif (869 bytes)純血犬

純血犬は、はっきりした目的を持って作られた犬である。

人間の欲の数だけ、犬種が存在する。
足の速い犬が欲しい、家畜の番をする犬が欲しい、狩猟の友となる犬が欲しい、抱っこしてかわいがるのに都合のいい犬が欲しい…
そうした人間の希望をかなえるべく作出された純血犬の種類は、まだ増え続けている。

純血犬の利点は、犬を飼う目的がはっきりしている場合、選択が容易な点である。
水鳥猟に連れていくならポインターなどのガンドッグやスパニエル、レトリバー。犬レースならグレイハウンド。橇を引かせるなら、ハスキー。といった具合だ。

また、成犬となったときの体の大きさが予測できるから、それに合わせたクレートや首輪を用意できる。
どんな性質を持っているか、どんな犬種特有の遺伝的疾患があるか、など事前に情報を得ることが可能であり、またその情報の質・量ともに充実しているのが純血犬の便利な点である。

さらに、ルックスにこだわる人にとっては、純血犬は裏切りが少ないので好都合だ。
毛の長さや質、色、耳の形、尻尾の形など、子犬のうちからほぼ確実に予測できる。

欠点というと、なんといっても遺伝的疾患の多さだ。
ある特定の形質を作るために、インブリードやラインブリードなど近親交配を繰り返した結果、股関節形成不全をはじめとする遺伝性の病気が子孫に受け継がれてしまった。
よく勉強しているブリーダーが注意に注意を重ねて繁殖しても、異常個体が生まれてしまう。これはもう、純血犬の宿命なのだろう。
ましてやいいかげんな繁殖の結果生まれた純血犬にいたっては、身体面だけでなく性格まで荒れてしまったものが見うけられる。

それから純血犬の場合、飼い主が犬の意向とかかわりなく張り切り過ぎてしまうことがある。
「ボーダーコリー飼っちゃったから、フリスビーさせなきゃ!」
などと、無理やり原っぱに連れて行って特訓。犬がのってこないと、どうしてやらないのよ、この子は本当にボーダーなのかしら?と悩む。この人の頭の中には、
ボーダー=フリスビードッグ
という方程式が刻み込まれているのだろう。
ボーダーだっていろんな子がいる。アジリティやフリスビーに興味を示さない子もいるし、羊が嫌いで牧場から追い出された子もいる(彼女はのちに、税関で働く密輸品探知犬となった)。

また日本においては、純血犬は受難の犬生である。
流行にとびつく国民のニーズに答え、まるで工場でおもちゃを生産するように子犬を繁殖する。もともと少ない遺伝子プールの中で繁殖を重ねるから、当然生まれつき疾患を持っている犬が多い。
流行の衰退とともに、犬も捨てられてしまったりする。
だがわずかに生き残った元流行犬は、土着の犬と交配し、密かに遺伝子をばらまいているようだ。
セイタカアワダチソウのような帰化植物的にたくましく増殖する、元流行純血犬。
日本の雑種事情も、変わりつつある。

paw2.gif (869 bytes)雑種

雑種は貧乏人の犬、という偏見が強い日本に比べ、アメリカやカナダではむしろ雑種をこよなく愛する人々が多い。TABIがメンバーになっているK9Zによれば、イギリスでも雑種犬ファンはけっこういるようだ。

雑種の特典は、○○種だから○○ができなきゃ、といったプレッシャーが全くないことだ。
たいてい、親犬のうっかり妊娠の結果である。犬生のスタートから、リラックスしている。
飼い主の期待も大きくないから、のんびり屋が多い。

逆に、いろんな可能性を秘めている犬でもある。
日本人は使役犬になるには純血でないとダメだと思っているらしいが、そんなことはない。
アメリカやカナダでは、介助犬、警備犬、病院や老人施設のボランティア訪問犬、災害救助犬、映画やコマーシャル・雑誌モデル犬など、ありとあらゆる場で雑種が活躍している。

雑種はスタミナがあり丈夫で物覚えがいいと、好んで訓練するトレーナーもいる。
また、それぞれの親から好ましい性質を受け継いで生まれた子の場合、純血犬より都合が良いケースがある。例えばゴールデンやラブは盲導犬としてよく使われるが、毛が抜けるので飼い主がアレルギーだと困ることがある。だが、ラブとプードルのミックスで毛がプードルタイプだと、そういった問題がない。
ということで実際に働いているラブ・プードル(ラブラドードルと呼ぶらしい…)だっているのだ。

雑種の困った点は、子犬の場合どちらの親の形質がどれだけ出るか、将来の予測がつきがたいところだ。
体の大きさ、性質、毛の長さなど。
親がわかっている場合はまだいい。TABIの場合は、母犬(ラブ)をよく知っていたので、まあ大きくなってもせいぜい彼女くらいだろう、それか父犬(ボーダーコリー)くらいの大きさだろう、と想像していた。
大きさはほぼ想像どおりだったが、毛が思ったより長くなって驚いた。

ある人は、動物愛護協会でビーグルミックスだと言われたので大きさがちょうどいいと思ってたら、どんどん成長して30kgを越えてしまったのだ、と嘆いていた。

でもまあ、どんな子になるかお楽しみ、と思いながら子犬を育てるのもおもしろいかもしれない。

(2001年9月21日)

子犬か成犬かへ  オスかメスかへ

banner ホームへ犬飼い指南トップへ

Copyright 2000 to Infinity, superpuppy.ca