洗濯デー

paw5.gif (126 bytes) 夫婦喧嘩のもと

カナダ人はよく、
「月曜日が私の洗濯デーなの」
というようなことを言う。

つまり彼らは、洗濯は一週間に一度くらいしかしないのだ。

私は結婚した当初、これでよく夫婦喧嘩したものだ。
日本で生まれ育った私は、洗濯というものは毎日するものだと思っていた。
たいていの日本の主婦は、こまめに洗濯をする(と思うのだが?)。
実家の母は、朝起きるとまず洗濯機を回す。うちは両親と娘の私の3人家族だから、そんなにたくさん汚れ物はないのだが、それでもきれい好きな母は毎日洗濯していた。

それを見ていた私は、カナダにお嫁に来てからも母流に毎日せっせと洗濯したのである。
当時夫は、野球・ハンドボール・ホッケーのクラブに入っていて、一年中ユニフォームの汚れ物が出るから、洗濯のしがいがあった。
ところが夫は、それを見てビックリ仰天し、水と電気の無駄だからやめろ、と言った。
「カナダ人はそんなに毎日洗濯しないんだよ。俺のお袋は、10日に一度だ」

paw5.gif (126 bytes) カナダ流合理主義

私が毎週欠かさず読む地元の週刊誌 "The Coast" に、 "PopMachine" という連載記事がある。
これは、街の流行りものや話題を追うコラムで、担当しているのは Lezlie Lowe という若い(たぶん20代半ば)の女性だ。

あるとき彼女は、記事の中でこんなことを書いていた。
「私は、パンティーを60枚持っている。これだけあれば、毎日パンティーを取り替えるとしても洗濯は二ヶ月に一度で済むからだ」

パンティーが話題の記事ではなかったが、私はその個所を読んでびっくりしてしまい、あとの内容を覚えていない。

彼女は独身でアパート住まい、しかもフルタイムで働いているから、もちろん洗濯は毎日はできまい。
洗うのもコインランドリ―だろう。
だが、2ヶ月も汚れ物を、どこにどうやってためておくのか?
血液のシミなどは、そんなに時間がたってはおちないのではないか?

昔、「男おいどん」というマンガの主人公の独身男が、洗濯物をためこんでキノコが生えてしまい、「サルマタケ」と名づけていたのを彷彿とさせる。
だが、そりゃ男だから笑い話ですむのではないか。
Lezlie はうら若き女性、しかもポップカルチャーを語り、Max Mara を着こなすおしゃれ人間である。
その彼女が汚れ物を二ヶ月…そのギャップ!!

それを堂々と世間に公表しているのにも驚きだ。
日本だったら、お嫁のもらい手がないのではないか?(今の若い人は、そんなことは気にしないかもしれないが)

だが、カナダ人に言わせると、
「合理的でいいじゃない」
ということになる。水と電気の節約になるからだ。
お嫁のもらい手がないどころか、こういう奥さんは節約上手として歓迎されるのだ。

paw5.gif (126 bytes) 和平への道

独身者のみならず、子持ち家庭でも洗濯はたまにしかしない。
まわりに聞いても、やはり週一がほとんどだ。
洗濯デーには何度も洗濯機を回すのかというと、そうでもなく、洗濯機にこれでもかと汚れ物を詰め込み、洗剤とカラー用ブリーチなどをぶち込み、一度で済ませてしまうらしい。

おまけに、玄関マットやスニーカー、野球帽なども一緒だ。
「お台所の布巾と雑巾は、別にして洗いなさい」
と、母から厳しく躾られた私には、めまいがしそうな図である。ミソも○○も一緒、というやつだ。
そんなやり方でも洗えるように、丈夫な生地・強力な洗剤・頑丈な洗濯機・乾燥機が開発されてきたのだ。

夫が野球チームに入っていたころ、私は彼が練習から帰るとせっせとユニフォームを洗った。
試合を見に行くと、センターを守る夫がやけに白く目立っていた。
チームメイトは、一シーズンに一度くらいしか洗わない。彼らは、泥と汗の汚れで白いユニフォームがねずみ色に変色していたのだ。
シーズン終了後はユニフォームを返却するのだが、夫のは洗いざらして紺色の背番号がすっかり白っぽくなってしまっていた。
「これじゃ来年使い物にならないから、あげるよ」
と、マネジャーに言われてしまった(笑)

そんなことが続いて、洗濯をめぐって夫婦喧嘩が絶えなかった。
が、ついに戦いが平和的に終結する日が来た。

ヨーロッパでよく見かける、ドラム式洗濯機を購入したのである。
ドラム式は、洗濯機自体はたいへん高価だが、構造的にモーターに負担が少なく、一生ものと言われる。また、水の使用量が普通のトップロード式に比べて1/3以下で済む。さらに、電気の使用量も少ない。
毎日洗濯しても、水と電気をそれほど無駄に使わないのだ。

新しい洗濯機のおかげで、水道局からの請求書を見るたびの喧嘩がなくなってうれしい。
また、夫も長いこと私と暮らして、いつもサッパリときれいに洗濯されたシーツやユニフォームの心地良さがわかるようになったらしい。

不合理と言われても、日本人の私はやっぱり毎日洗濯がしたいのよね。

(2001年9月17日)

Winnieのゆくえへ  奇跡の生還へ

banner ホームへ知ってるつもりトップへ

Copyright 2000 to Infinity, superpuppy.ca