メープルの森を訪ねて

カナダ東海岸の春は、メープルシロップの香りで始る。

mapleその昔、雪の残る砂糖カエデの森で、北米先住民(一般にインディアンと呼ばれるが、彼らはそう呼ばれるのを好まない)は春の味覚作りにいそしんだ。
木の幹に斧で傷をつけ、ヘラをとりつけ、そこにバケツを下げて樹液を集める。バケツにたまった樹液は大きな樽に空けられ、馬そりにひかせて小屋まで運ぶ。そして樹液は大きな釜で何時間も煮詰められ、やがて琥珀色のシロップができあがる。

植民地時代初期に、フランスから移住してきた開拓民にこの伝統的製法を教えたのは、先住民だ。その後、この香り豊かな甘味料は人々をたちまちとりこにし、カナダを代表する味覚になって現在に至る。

カナダのおみやげといえば誰でも思いつくのが、メープルシロップとスモークサーモンだ。だが、このシロップをとる砂糖カエデは北米東海岸にしか生育してないということは、意外と知られていない。カナダではケベック州が全国の生産量の60%を占め、あとオンタリオ州、さらに大西洋岸各州が続く。アメリカではメイン州、バーモント州などが産地として名高い。その地域の土壌、木の種類によって、それぞれ独特の香り、味、色がある。

樹液があんなに甘いシロップになるなんて、不思議ではないか。雪解けの頃、樹液のでんぷん質が酵素の働きにより糖分に変わる。これを煮詰めて水分をとばすことで、とろりと甘いシロップができるのだ。30〜40リットルの樹液から1リットルのシロップしかできない。製造方法が近代化されたとはいえ、今でもたいへん貴重な食品である。

早春、各地のシュガーキャンプ(メープルシロップ製造工場)はメープルの香りで包まれる。丁度学校が春休みとあって、見学に訪れる子供たちも多い。たいていのキャンプでは、メープルの森ツアーやパンケーキランチなど、子供連れが楽しめるイベントを企画して観光のよびものとしている。

今回私たちが見学したのは、そうしたイベントの一切ない、ただマジでシロップを頑固に作り続ける老舗のキャンプである。プロのバイヤーか、よほどの物好き(例:TABIママ)でないとおそらく訪れない山の中であるが、一応彼らは一般にもオープンしているし見学も歓迎している。マジなだけに、製品のクオリティは高い。メープルシロップ好きなあなた、是非このレポートを読んでみてほしい。

(2001年6月7日)

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