犬ぞり豆知識

Bobは、犬や犬ぞりのことなら何でも知っている。
そんな彼から聞いた話をまとめてみた。

  1. 犬の食餌
  2. 犬ぞり
  3. 犬ぞり犬
  4. 犬ぞりレース
paw4.gif (869 bytes)犬の食餌

ディズニーの映画"Snow Dogs" では、犬ぞり犬が"slump"というシチューをエサにしてたけど、ここの犬は何を食べてるの?

Bob: "slump"は、昔からマッシャーが犬に食べさせてきたもので、地元でとれた鮭や、牛・羊・鶏なんかの臓物とかいろいろ、ぶつ切りにして煮たいわばごった煮のこと。
僕もいろんなレースに行ってそれこそたくさんのマッシャーに聞いてみたけど、やっぱり市販のドライ・フードじゃ力が出ないんだよ。だから、今でもほとんどのマッシャーがそれぞれ独自の"slump"を作って犬に食べさせているよ。

エネルギー消費量が多い犬ぞり犬は、タンパク質30%:脂肪55%:炭水化物15%の比率で摂取するのが理想といわれている。普通のペット犬とは違うよね。
一日の摂取カロリーは、夏は気温が高いのと運動量が少ないのとで1000kcalくらい。冬は寒さに対応するためとそり引きでエネルギーを消耗するのとで、高脂肪のエサが必要になるので3000kcalくらい。また、極寒地での長距離レースともなると一日10000kcalぐらい必要になってくる。これだけのカロリーを吸収できる体でないと、長距離のそり引きはむずかしいね。
高脂肪にするために、ラードとかビーバー肉とかの脂身を与える。そうしないと、極寒地ではどんどん痩せてしまう。

うちの犬たちもやはり、手作りのエサを食べさせているんだよ。
僕はこれをBARF(Biologically Appropriate Raw Food)と呼んでいる。"slump"の他、魚・牛・羊・鶏・豚・兎・鹿・ムース・七面鳥など、ありとあらゆる骨付き肉を生で与える。また、レバーなど臓物で犬用ブラウニー(本来ブラウニーは、ココアパウダー入りのチョコレートケーキ風のお菓子)を焼いておやつにしたり。
Ann: これは本物のブラウニーとよく似ているから、人間が間違って食べないように注意しないと(笑)

BARFといえば、Dr. Ian Billinghurstが提唱して世界中に広まった食餌法ね。うちでもTABIに手作りエサと生の骨をあげてるのよ。

Bob: どうりで健康そうで毛の艶が良いと思ったよ!この子は幸せだねえ。(と、目を細めてTABIをなでまくる)
実は僕は、以前は市販のフードを販売してたし、自分の犬にも食べさせてたんだ。でも、犬にどうにも思ったとおりの結果がでないし、トラブルばかり。それでいろいろ調べて、フードが良くないってわかった。食餌を変えてからは随分良くなったよ。なんといっても、これだけの数の犬がいるのに臭くないんだ。

ほんと!私も不思議に思ってた。

Bob: 食餌が変わると、フンの質も量も変わるんだよ。量は圧倒的に少なくなるし、充分に消化吸収された残りだからニオイが少ない。
それに生骨をかじることで歯をきれいに掃除するから、犬の口臭がなくなるんだ。

paw4.gif (869 bytes)犬ぞり

犬ぞりレーサーを意味するマッシャーの語源は?

フランス語の"marcher"(歩く)が語源。でも、そりを走らせるときに「マッシュ、マッシュ」と声をかけるのは映画の中だけだよ(笑)。

訓練はいつから始めるの?

生後8ヶ月からハーネスをつけて慣れさせ、枝なんかの軽いものをひかせて後ろから音がしても騒がないように慣れさせる。一年半から二年くらいは、骨格が固まるのを待つ。まだ骨が柔らかいうちから無理させると、あとでとりかえしがつかなくなるからね。エンジュランス(耐久訓練)を本格的に始めるのは、生後3年過ぎからがベストといわれている。

夏にはタイヤなどを引かせて訓練し、秋になったらベテランに混ぜてそりを引かせる。5分もしないうちに引き方を覚えるよ。すごいもんだよ。犬ぞり犬は、そりを引く本能が本当に強いので、とくに教えなくても持って生まれた血が騒いですぐに立派なそり引きになるもんだ。
新人は、ベテランを見ながらどんどん学習していく。

そり引き犬は、どのくらい現役でがんばるの?

だいたい10年から12年は現役で引っ張れるね。そり犬は丈夫だからね。

リーダー犬はどうやって訓練するの?

リーダー犬は訓練でつくるものじゃなく、これだけは生来持って生まれた天性とでもいうものだね。体格、体力、高い知能、統率力、そしてマッシャーに対する忠誠心。全てを兼ね備えた犬はなかなかいない。良いリーダー犬がいると、チーム全体がうまくいく。

paw4.gif (869 bytes)犬ぞり犬

ここにはいろんな犬ぞり犬がいるけど?

Bob: うちには今、アラスカン・マラミュート、シベリアン・ハスキー、カナディアン・イヌイット・ドッグ、アラスカン・ハスキーがいる。
マラミュートは犬ぞり犬のうちで一番でかい。彼らは、アラスカの先住民が熊などの大型獣を狩るのに使ってた犬だから、体がでかくて重いものを引っ張るのが得意なんだ。
イヌイット・ドッグは、やはり先住民がそり犬として重宝してきた犬で、今のアラスカン・ハスキーの祖先でもある。うちには、あのTOGOの血を引く犬がいるんだよ。

TOGOって、あの血清を届けた犬?

この血清とは、映画にもなった有名な"The 1925 Serum Run"の実話に出てくるもの。
1925年1月、アラスカの小さな町ノームでジフテリアが大流行したが、ここには治療に必要な血清がなかった。そして、子供達はどんどん死んでいった。そこで大都市アンカレッジから血清を取り寄せることになったが、悪天候のため飛行機は飛ばせない。最後の手段として犬ぞりを使うことになった。

梱包された血清は、アンカレッジからネナナまで列車で運ばれ、そこからノームまでは20の犬ぞりチームがリレー式に運ぶことが計画された。1月26日にアンカレッジから送られた血清は、2月2日無事にノームに到着、大勢の子供の命が救われたのである。

Bob: そう、Leonhard Seppalaのリード・ドッグだ。
彼らが次のチームへの引継ぎ地点にたどり着いた時、そのチームはいなかった。それで、そのまた次のチームの待つ地点まで走ることになった。零下40度でブリザードが吹きまくるなか、TOGOのリードだけを頼りに凍った川を渡った。結局彼らは、全部で260マイル(約483km)も走ったんだよ。他のチームは20マイルから60マイルだからね、これは驚異的な記録なんだ。

Seppalaは、こんなに活躍したTOGOなのに世間の知名度がBALTOに比べると低いんで、かわいそうに思ってたらしいよ。

BALTOは、ディズニーの映画になったし、ニューヨークのセントラル・パークには銅像もあるのにね。

Bob: そうそう。BALTOはリレーチームの最後、Gunnar Kaasenのリード・ドッグだった。彼らはノームの町の人々に喝采とともに迎えられたんで、評判になったんだよ。でもリレーで活躍したのは彼だけでなく、他にもたくさんの犬やマッシャーがいたんだよ。

映画では、BALTOは犬と狼の混血という設定だったけど…ホントは違うんだよね?

Bob: 彼はいわゆるアラスカン・ハスキーだね。

paw4.gif (869 bytes)犬ぞりレース

血清を届けた逸話をもとに、犬ぞりレースのアイディタロッドが始ったんだよね?

Bob: うん、世界の四大犬ぞりレースというと、アイディタロッド、ユーコン・クエスト、ノースアメリカン・チャンピオンシップ、そしてファー・ランデヴー。

アイディタロッドは、毎年3月に世界中から強豪マッシャーが参加する長距離レースだ。
アラスカのアンカレッジを出発し、ノームまで平均10日以上かけて走りぬける。血清を届けた時とは違ってリレーではなく、一つのチームが最後まで走るので、寝ている時と食べる時以外は走ってるという、かなりハードなレースだね。

ディズニーの映画"Snow Dogs"の原作 "Winterdance"の著者も、これに出たんでしょ?

Bob: そう、著者のGary Paulsenは僕の友人なんだ。映画の主人公はマイアミの歯科医という設定だけど、本人は作家だよ(笑)。彼は、1983年と1985年にレースに参加し、2度目は完走している。
今、彼は心臓を悪くして犬ぞりはあきらめてしまったけどね。

Bobはもうレースに出ないの?

Bob: もう出ることはないだろうね。ここで一般の人にスポーツとしての犬ぞりの楽しさを教えることのほうがいいね。レースは「勝つ」ことが究極の目標になると、いろいろギスギスしたことも出てくるわけで…

一度あるレースに初めて出た時、ベテランレーサーからこう言われたんだ。
「どこそこのカーブに気をつけろ。減速しないと、大変だぞ。そりごとひっくり返ったやつもいる」
僕はありがたい忠告だと思って、そこのカーブに来た時減速したんだ。犬は、何やってんだ?って顔して先に行きたがるので、押さえるのに苦労した。

そしたら、例のレーサーのチームが後から追ってきて、減速するどころかぐいぐいスピードを上げて僕たちを追いぬいて行った。実際そのカーブを走ったら、何の問題もなかった。後で他のレーサーに聞いても、そこのカーブで減速するやつなんていなかった。

ちくしょう、やられた、と思ったけど、あとの祭り(笑)。犬の直感のほうが正しかったね。

(2002年2月10日)

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