質判定テスト
 

paw2.gif (869 bytes)気質判定テストとは

アメリカに引っ越した年の秋(2005年9月24日)、夫婦でボランティアとして犬の気質判定テストのお手伝いをする機会を得た。なかなか興味深い内容なので、紹介しよう。

ATTS American Temperament Test Society は1977年に創設された非営利団体で、純血種と去勢済みの雑種の気質判定テストを行っている。テストにかかる時間は10分前後で、団体認定の試験官とジャッジにより判定される。判定テストに合格した犬には、認定証とタイトルが授与される。

テスト当日お世話になったジャッジによると、このテストは、いわゆる子犬の性格テストや盲導犬の適正テストなどとは違う。純血種は、その犬種により求められる気質や理想とされる性格が異なる。その犬が、果たしてその犬種としてのあるべき気性を備えているかどうか、そこを判定するのがこのテストである。例えばゴールデンレトリバーならフレンドリーでおだやかな性格が期待されるが、ドーベルマンは見知らぬ人に対し警戒心をもち、飼い主を保護する行動をとることが求められる。この二頭が同じテストを受けても、それぞれ違う反応を示すことは全く自然であり、判定もその犬種基準にそって行われる。

雑種においては、例えばスプリンガースパニエルとプードルの雑種ならば、双方の犬種特性を基準にして判定される。どちらの親の気質をより多く受け継いでいるのか、経験豊富なジャッジは深く見抜いて分析する。

実際には、このテストは純血種を真面目に繁殖しているブリーダーが、将来繁殖したいと思っている若い犬の気質を判定してもらうために受けているケースが多いようである。テスト当日に見たのも、そうしたブリーダーと未去勢の若い犬ばかりであった。真面目なブリーダーは、当然のことながらすでに健康状態や遺伝的疾患のチェックは済ませており、気質判定テストは最後の確認、といったかんじだ。 理想の気質を備えた犬を繁殖することは、大事だ。ブリーダーは、テスト結果を参考にどの犬を繁殖犬として残すか検討するという。誤解のないように言えば、ジャッジは犬の気質を判定するのが仕事であり、結果的にその犬を繁殖するかどうか決めるのはブリーダーの一存である。

テストは生後18ヶ月を過ぎた犬が受けることができる。合格しなかった場合、最低5ヶ月の間をあけてもう一度だけ受けることができる。この日受験した犬たちはみな、いずれもショーのチャンピオンであったり 、その他の犬スポーツでいくつかタイトルを保持しており、水準の高い美しい犬ばかり。健康チェックもパスしてるのに、気質がいまいちだと繁殖ラインからはずされることも。人間で言えば、家柄が良く才色兼備でスポーツ万能、学歴もバッチリ、健康で性格も抜群、みたいな少女漫画の主人公のような、ありえないタイプであることを要求されるのだ。まことに、純血繁殖犬とは大変だ。自分は人間に生まれて良かった、とつくづく思う。

しかしこのような真面目なブリーダーは、アメリカにおいてもかなり、かな〜り珍しいといえる。 気質判定はおろか、必要な健康チェックさえもせずに犬を繁殖して売りさばいているブリーダーのほうが多い。真面目なブリーダーはよく勉強しているし、当日も州内はもとより、近隣の州からわざわざこのテストのために何十時間も車を運転して受験しに来ていた。ここまで時間とお金をかけるブリーダーなのだから、彼らの犬は水準が高いのも当然で、そうした犬を見る機会を得たのは私たちにとって良い経験だった。

paw2.gif (869 bytes)テストの実際

さて、テストは犬クラブの会員の自宅の庭(といっても、牧場を併設しているので広い!)で行われた。テストの性格上、ここであまり詳しい状況を説明することはできないが、アジリティのリングほどの大きさの場所に、いくつかのチェック・ポイントが設けられている。基本的に飼い主は、犬に6フィートのフラットリードをつけ、スタートからフィニッシュまで普通に散歩をするように歩いていく。チェック・ポイントを通過する たびに、犬の注意をひく何かが起こる。その時の犬の反応を見て、三人の試験官とジャッジが判定し、総合評価で合格・不合格が決まる。

おもしろいのは、同じ犬種や同腹の兄弟であっても、反応の仕方が異なることだ。また、いわゆる番犬気質のワーキング・ブリードであっても、犬種によって飼い主をかばう行動に違いがあり、「あらまほしき行動」と「よろしくない行動」に微妙な差がある。怪しい者に対し吠えたり威嚇する犬もいれば、吠えないがさりげなく飼い主をさえぎるように身を置いて相手の様子を観察する犬もいる。フリーズしたように何の反応も示さない犬もいる。それぞれの評価は、犬種によって違ってくる。そこまでつっこんで犬の行動を観察したことがなかったので、本当におもしろいと思った。

こうした行動は、犬が自然にとる行動なので、日常の訓練で矯正できるものではない。わざわざテストを想定してあれこれトレーニングしたところで、まず役に立たないだろう。そういった意味では、犬本来の性格がもっとも良くわかるテストであり、興味深い。

さて、一組ずつテストをしては総合評価を出し、ジャッジが飼い主本人にその結果を報告する。思い通りの結果が出て喜ぶ人あり、意外な評価に不機嫌になる人あり、いろいろだ。みな真面目なブリーダーなので、プライドもすごく高い。普通のペットなら、お行儀さえ良ければ飼い主は満足するところだが、何度も言うようだが純血繁殖犬はそれだけでは足らず、飼い主の期待が大きくてほんっとに大変だと思う。

テスト当日は秋というのに真夏のように暑い日で、一日中外で働いた私たちはミネラルウォーターをがぶがぶ飲みながらお手伝いをした。また、庭には鋭いトゲのあるサボテンがあちこちに生えており、テスト中に足にトゲを刺して泣き声をあげる犬が出たため、中断してみなでサボテン狩りをする一幕もあった。おまけに、強風でテントのポールがまっぷたつに折れるハプニングも。主催者によれば「今回はまだマシよ。前回は、テスト中に雪がちらつきはじめたと思ったら、吹雪になっちゃったのよ」とのこと。

個人的にはサボテンも吹雪も歓迎したくないが、いろいろ大変ではあったが勉強になったことは確かだ。また機会があったら、是非お手伝いしてみたいと思う。

(2007年4月20日)

Stanley Coren セミナーへ  CGCテストへ

banner ホームへわんちゃん学校トップへ

Copyright 2000 to Infinity, superpuppy.ca