FINNEY
お散歩スコッティ |
夫と車で買い物に出たところ、高速道路脇をトボトボと歩く小さな黒犬が。赤い首輪をつけた、スコティッシュ・テリアだ。飼い主の姿はない。
こんなところで一体?!このままでは車に轢かれてしまう。
車を止め、車内にTABIを残し、私はTABIのリードを手に、夫はドッグクッキーをつかんで外に。ちょっと不安げなスコッティに近づき、しゃがんでやさしい声で呼んでみた。おそるおそる鼻を寄せる犬。クッキーをあげるとお腹が空いてるらしくバクバクと食べる。きれいにグルーミングされてる子だが、首輪に犬タグがない。体は汚れていないので、迷子になってまだ数時間といったところか。
マイクロチップが入ってるかも、とTABIの獣医のもとへ連れて行くことに。すぐ車に乗せたのでは、車内のTABIとひと悶着起こしそうだ。そこで、外でリードつきのスコッティを待たせ、TABIを車から出して体面させる。ガウガウガウ!と大興奮のスコッティ。テリアらしい反応。TABIは、「な、なんだよこいつ…」といった顔をこちらへ向ける。
スコッティを落ち着かせ、私が抱いて助手席に乗り、TABIには後部座席で「伏せ」のまま待てをかけた。ずっと歩きとおしで疲れたのだろう、腕の中で居眠りするスコッティ。
獣医のもとでスキャンしてもらったが、番号は出ない。純血犬はブリーダーのもとでID番号を刺青することが多いが、それもしてない。受けつけの人が近隣の動物病院へ電話で聞いてくれたが、迷い犬の届け出は出てないという。
病院からアニマル・コントロールに連絡し、引き取りに来てくれることになった。72時間以内に飼い主が見つからなければ、里親を探すことになるという。
飼い主は心配して探してるだろうに。
その名はFINNEY |
翌朝電話が鳴り、夫が受話器をとると女性の声で「先日はうちの子がお世話になったそうで…」
迷子のスコッティの飼い主だ。獣医さんとこから連絡先を聞いたらしい。
つい最近他州から引っ越してきたばかりなので、犬タグをつけてなかったのだそうだ。うっかりフェンスのない庭に放しておいたら、逃げちゃったとか。
私たちがあの子を見つけた場所から、飼い主の家までは車で10分はかかる。すごい距離を、何度も道路を横断しながら歩いてたのだ。よく轢かれなかった。引っ越す前の家に帰りたかったのか?飼い主は、昨日は夜遅くまで車であちこち探してまわったのだそうだ。「黒いスコッティを見かけませんでしたか?」と聞くと、「そういえばこのへんを歩いていたね」と言う人はいたが、誰もそれ以上気にかけた様子はなかったそうだ。
疲れ果てて家に帰り、アニマル・コントロールに連絡したところ「黒いスコッティなら保護していますよ」とのこと。でもオフィスは閉まってしまったので、朝まで待たなければならなかった。そして朝一番にアニマル・コントロールへ引き取りに行き、保釈料を払って犬を連れて帰ったそうだ。
アニマル・コントロールのオフィサーからは「今後はきちんと犬を管理するように。名札をつけ、庭にはフェンスを設置すること」ときつ〜くお小言を頂戴したらしい。「今日さっそく大工さんを呼んで、フェンスの見積もりをしてもらったのよ」と言っていた。
そして、飼い主さんはその日の夕方、わざわざうちへ立派な百合の鉢植えを持ってお礼に来てくれた。
カードには、
「ぼくを助けてくれてありがとう。おかげさまで無事にうちへ帰ることができました。犬タグもつけてもらいました。 FINNEYより」
とあった。
FINNEYは、FINNEGANの愛称だ。スコットランド系の名前だ。ぴったりだね。よかったね、FINNEY。
FINNEYの百合は、その後我が家の庭に移植し、毎年白い花を咲かせている。
(2003年9月4日)
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