感謝祭
アメリカの感謝祭 |
アメリカのThanksgiving (感謝祭)のお祝いの様子を、映画やテレビで見たことのある人も多いだろう。
毎年11月の第四木曜がこの祝日となっている。アメリカ人の多くは続く金曜日に休暇を取って四日の連休とし、家族や友人たちを訪ねる。寮生活の大学生も、故郷へ帰る。
1620年、清教徒たちは迫害を逃れてメイフラワー号に乗り、イギリスからアメリカへ渡ってきた。
だが飢えと寒さでその半数が死んでしまい、気の毒に思った先住民(インディアンと一般に呼ばれる)が食べ物を分け、農作物の育て方や様々な知恵を授けて移民たちを助けてやった。おかげで翌年には彼らも豊作に恵まれたので、豊作を神に感謝し、犠牲となった仲間たちをしのぶ祭りをすることになった。
これが発端となり、1789年には正式な祝日として制定された。
この日の夕食は、メインが七面鳥の丸焼き。お母さんが、中に詰め物をして4時間以上かけてオーブンで焼き上げる。七面鳥を焼くため、アメリカのオーブンはでかい。
それを一家の長であるお父さんが、テーブルでそれぞれに切り分ける。他に、七面鳥にかけるグレービーとクランベリー・ソース、西洋さつまいも、じゃがいも、とうもろこしのパン、かぼちゃパイなどが並ぶ。
七面鳥の丸焼き
このお祭りが終わると、アメリカ人はクリスマスの飾りつけを始める。
街中がホリデー気分のイルミネーションでいっぱいになり、一年で一番忙しい季節の到来となる。
お祭りの発端は、先住民と移民との美しい友情だ。だが、その後アメリカ人が先住民をどう扱ったかを考えると、このお祝いも自己満足でしかないな、という気がする。
「あの時は助けてくれてありがとよ。でももうあんたらの助けはいらないんだ。とっとと消えちまいな」
という、いかにもアメリカ人らしい切りかえの早さ。
感謝祭はまさに、アメリカを代表する、全くアメリカらしい祝日といえるだろう。
カナダの感謝祭 |
実はカナダにも感謝祭はある。
何でも大げさに派手に騒ぐアメリカに比べ、カナダは地味〜にやり過ごすので目立たないが、一応お祝いはするのだ。
ただし、日にちが全く違う。毎年、10月の第二月曜日である。それに先立つ金曜日は半ドンの会社が多く、午後から連休の始りとなる。
親類・家族が集まって一緒に夕食を囲むことも多い。お祭りのパレードを行う街もある。
なぜ10月なのか?
カナダの感謝祭は、発端が全く違うのである。
ヨーロッパからカナダへ移民してきた人々は、それぞれの故郷で行っていた伝統的祭りを新大陸でも祝っていた。その一つが、秋の収穫祭である。今でも、ドイツ系の人は秋に「オクトーバーフェスト」と呼ばれる収穫を祝うお祭りを行うことがある。つまり、今の感謝祭が始るずっと以前から、こうした秋の収穫祭はカナダ各地で行われていたのである.
1578年、イギリス人探検家マーティン・フロビシャーは、長い航海を無事終えてカナダへ上陸できたことを感謝する公式な祝典を、ほかの移民とともにニューファンランドで行った。これが記録に残る公式な「感謝祭」であり、その後このお祭りはその地域の伝統行事となった。
アメリカ独立戦争時、カナダへ逃げてきたイギリス派のアメリカ人たちは、アメリカの感謝祭の行事をカナダへ持ちこみ、これがカナダ全土へ広まった。
つまり、もともと秋の収穫祭だったものが、ある地域では別の意義を持つ「感謝祭」となり、さらにアメリカからの輸入版感謝祭と混ぜこぜになって、各地でお祝いされてきたらしい。
そして1957年、カナダ議会は10月第二月曜日を感謝祭の祝日と定めた。
この日は、「豊作を全能の神に感謝する日」とされている。
やはり、収穫祭なのだ。
感謝祭のご馳走 |
道徳の教科書に出てきそうな、できすぎた歴史を持つアメリカの感謝祭に比べ、カナダのは単なる収穫祭であるから、この祭りは食い気のみである。
じゃあどんなご馳走がでるか、というと、これがまたカナダの芸がないところで、アメリカとおんなじ。七面鳥がメインの伝統食だ。
この七面鳥だが、はっきりいってたいして美味しくない。パサパサでくさみもある。1羽がでかいから、小人数の家族だと食べ尽くすのに何日もかかる。今日はサンドイッチ、明日はサラダ、明後日はスープ…と品を変えても、中身はおんなじだ。
日本の正月の餅のようで、三が日を過ぎると雑煮も飽きたよ、みたいなものだ。
ちなみに、七面鳥はキログラム単位で見ると非常に安価な肉である。決して贅沢品ではない。
他にテーブルに並ぶものだって、とうもろこしのパンとか、ファスト・フードの人工的な味に慣れた若い人の舌には決して満足してもらえない、素朴な時代遅れの食べ物ばかりである。
でも伝統だから、一応みんな毎年食べるらしい。日本でいったら、お赤飯と鯛の尾頭付きみたいなものだからだ。私はお赤飯も鯛も好きだけども。
我が家はどうするかって?
結婚以来、感謝祭に七面鳥を焼いたことはない(笑)
私は菜食で、家禽肉は食べない。七面鳥を食べたことは、今までで二回くらいである。一度目は、国際線の機内で、ベジタリアン・ミールをリクエストしてあったのに用意してなくて、七面鳥か牛ステーキしかなかった時。二度目は、知人の家に呼ばれて感謝祭の夕食をともにした時。
うちは夫婦二人で、それぞれの家族は遠いので集まることもないし、七面鳥1羽を焼いてももったいない。今は犬がいるからあげてもいいが、実はうちの犬もあまり七面鳥を喜ばないのだ。一回は食べるが、毎日だとイヤがる。夫も別に七面鳥を食べたがらない。
それで我が家では、感謝祭の夕食にはスパークリングワインを開け、ラザニアなど夫の好物を作る。かぼちゃは私の大好物なので、パイやプディングなどのデザートにする。犬には、よそからいただいた七面鳥肉があったらあげることもある。
こんな感謝祭のディナーがあったって、いいじゃない?
参考: Canadian Thanksgiving at Web Holidays
(2001年10月8日)
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