ブラックベリーワイン

paw5.gif (126 bytes) 夏の思い出

TABIファンの方々から質問の多い、ブラックベリーワインの作り方について書いてみよう。

ワインを造ろうへでは、市販のワイン・キットを使ったテーブルワインの作り方を紹介した。が、このブラックベリーワインは、実際に私達が野山に野生のブラックベリーをつみに行き、その果汁を発酵させて作る伝統的な手作りのワインである。ブラックベリーはバラ科の低木で、アメリカやカナダでは山野や高速道路のわきなどいたるところに生えている。初夏に白い花が咲き、7月から10月くらいまで次々と甘い黒い実がなる。昔からネイティブ・カナディアンは、この実を集めてソースやジャムなどの保存食を作って冬にそなえてきた。今でも、季節になると家族総出でベリーをつむ人々が、あちこちで見られる。葉や茎に鋭いトゲがあり、つむのに工夫がいるが、熟した実を一度食べるとその美味しさに病みつきになる。

今では様々なワイナリーがブラックベリーワインを販売しているが、やはり自前のワインが一番おいしいと思う。ブラックベリーは驚くべき生命力を有した植物で、地面すれすれに切り倒しても、すぐに回復して猛スピードで再生し、あっという間に茂って花が咲き実がなる。そのような強い植物を食べることは、私たちの体に強いエネルギーを取り入れることでもある。野生の実は上の画像のとおり小さいのだが、スーパーで売っている実に比べたら味が格段に良い。

TABIが元気だったころ、夏になると私達夫婦はよく一緒に森に散歩に行き、ブラックベリーを籠いっぱいにつんできた。つんでいる間、TABIは周囲の木々の間をあちこち歩いたり、飼い主と散歩にやってきたなじみのワンコとかけっこしたり川に飛び込んだり、あの子なりに楽しんでいた。TABIは亡くなる半年前まで、そうやって私達と一緒に森へブラックベリーつみに出かけていたのである。今でも野山でブラックベリーの茂みを見ると、あの子の笑顔を思い出す。


「ベリーつみに行くんだって!」

paw5.gif (126 bytes) つくり方

ブラックベリーのワインのレシピは様々なものがあり、地域や家庭によってもいろいろなバラエティーが見られる。これが一番!というものは、ないように思う。ここに記載するつくり方は、TABIパパの職場の同僚から教えてもらったものを私達なりにアレンジしたものである。一番大変なのは、一つ一つ実をつんで必要な量をためることで、これに何か月か要する。なので、集めた実はそのつど冷凍庫に保存しておき、たまったら解凍して使う。

なお、ワインづくりに使う容器や器具類は、あらかじめ消毒しておくこと。自家製ワイン・キットを扱う店で、酸素系の消毒薬(無臭・無毒)が販売されている。

材料

野生のブラックベリー  40ポンド(約18キロ)
甘藷糖(ほかの砂糖でも可)  10ポンド(約4.5キロ)
ワイン用イースト  一袋(5グラム)
ぬるま湯 適量(以下のつくり方参照)

まず、冷凍庫からブラックベリーを取り出し、消毒したワインづくり用のバケツ(容量5ガロン)に入れて一晩おき、自然解凍する。


カチカチに凍ったベリー

解凍したベリーを、ジューサーにかけて汁を絞る。私達は以前は実をそのまま残して発酵したのだが、ブラックベリーの種は大きく、あとで濾すのが一苦労だった。そこで、最初にジューサーにかけてしまえばあとがラクと考え、文明の利器を使うことにしたのだ。うちでは別に特殊なジューサーではなく、ごくフツ―の家庭用のジューサーを使っている。一回目に絞ったカスをとっておいて、もう一度ジューサーにかけて絞ると、かなりの汁がとれる。さらに絞りたい人は、そのカスを木綿の袋に入れて絞るといいかもしれない。が、私達はそこまでは面倒なので、カスは庭のコンポスト(有機肥料を作る容器)に捨てている。


ベリーをジューサーにかけるTABIパパ


二度絞りしたベリーの汁


「くんくんくん。。。いいニオイだねえ、パパ」

絞った汁をワインづくり用のバケツに入れ、甘藷糖10ポンドを加えて混ぜる。砂糖の量が10ポンドなのは、コストコで売っているオーガニックの甘藷糖が10ポンドの袋に入っていてキリがいいため。さらに人肌くらいのぬるま湯を加えて、全体量を5ガロンにする。バケツの内側に5ガロンの線がついているので、その線までぬるま湯を足せばよい。そこへ、ワイン用イーストを一袋加えて混ぜる。このイーストは、自家製ワイン・キットを扱う店で売っている。パン作り用イーストは全く違うものなので、使ってはダメ。


ワイン用イースト

次の過程はやらなくても全くかまわないが、私達はたまたま器具が揃っているのでやっている。液体比重計を使うことで、ワインが完成したらどのくらいのアルコール濃度になるか予想するのである。この比重計によれば、このワインは14%のアルコール濃度に仕上がるらしい。

そこまでできたら、エアロック(発酵栓)を取り付けたバケツのフタをして、10日ほど置く。このエアロックは、炭酸ガスを容器の外へ排出させるので、発酵しすぎて爆発!という惨事を防ぐ。さらに外気は入ってこないので、空気中の雑菌が入って果汁が腐敗するのを防ぐ。非常に便利な道具で、これもワイン・キットを売る店ならどこでも手に入る。

次に、無事に爆発をまぬがれた発酵果汁をサイフォンを使ってガラス製のカルボイに移す。カルボイの口にも、エアロックをつける。この時点でもぶくぶく泡が出ているが、次第に発酵が落ち着いてくる。不純物でにごっているように見えた果汁が、澄んだ果汁(上部)とにごったオリ(底のほう)に分かれてくる。


まだ全体がにごっている果汁

一か月ほどして泡が出なくなり、底にたまったオリを残して果汁が澄んだら、ワインの出来上がり。この時点でワインボトルにうつせるが、このまましばらく置いておいても大丈夫。時間の余裕があるときに、ボトル詰めすればいいのだ。ボトル詰めする前に、消毒したカルボイをもう一つ用意し、サイフォンを使ってワインを移す。一台目のカルボイの底にたまったオリを果汁に混ぜないためだ。この時にフィルターを通してワインを濾すと、さらにクリアなワインに仕上がる。初めにベリーの種とりをしなかった場合は、フィルターを通さないといけない。が、私達はベリーをジューサーにかけたので、このワインにフィルターはあえて使わない。二台目のカルボイに移したワインを、そのまま消毒したボトルにサイフォンを使って詰め、栓をしてできあがり。詳しいボトル詰めの手順は、ワインを造ろうへを参照のこと。 今は簡単にカスタマイズしてプリントできるラベルがワイン・キットの店で売っているので、ボトルに貼るとプロっぽい仕上がりになる。

瓶詰めしたワインは、冷暗所で最低半年は寝かせる。できたばかりのブラックベリーワインを味見するとわかるが、できたてはすごーく酸っぱい。寝かせることで、味がまろやかになる。我慢できるなら、一年は寝かせるとずっと美味しくなる。しかし、三年以上経過すると味が落ちてくる。やはり、飲み時というのがあるのだ。つくづく、ワインは生きているのだと感じる。


一年以上寝かせたワイン

仕上がったワインは、色は普通の赤ワインと同じ濃い葡萄酒色をしているが、香りはブラックベリー独特の甘みのある香り。ベリーの酸味と甘みがほどよい味わい。前菜からデザートまで、しつこくないメニューなら何でも合うと思う。ボトル詰めのときにフィルターで濾すぎると、色が薄くなり香りも薄くなってしまう。少しぐらいボトルの底にオリがたまってもいいなら、濾すぎないことがコツだと思う。

さて、この材料でだいたいワインボトル30本はできる。それだけの量をどうやって保存するかだが、私達は酒屋で一ダース分のワインの空き箱をいくつかもらい、それにボトルを入れて地下室で保存している。 熟成が終わったら、ワインラックやワインクーラーに移す。季節によっては車庫でもいいが、冬は零下になると液体が凍ってガラス瓶が破裂するおそれがある。日本なら、床下収納を利用できるかもしれない。

(2018年3月19日)

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