4月

ウサギとヒヨコ

4月は、ウサギと卵。

街には色鮮やかな卵とウサギがあふれ出し、イースター(復活祭)が近いことを知らせてくれる。クリスマスと並んでキリスト教の大きな年中行事で、十字架にかけられたキリストが三日後に復活したことを祝うお祭りだ。復活祭は、春分の日のあとの満月の夜から数えて最初の月曜日、と決まっているので、毎年日付が変る。が、大体毎年3月の末から4月にかけてが復活祭シーズンとなる。祝日は、イースターの月曜日の前の週の金曜日(灰の金曜日)から始まる。この金曜日が、キリストが十字架の上で死んだ日とされている。

日本にいるキリスト教徒でない人々にとっては全く関係ないお祭りではあるが、カナダとビジネス上の取引をしている方々は知っておかないと困ることになる。復活祭は国の休日であり、灰の金曜日から復活の月曜日まで会社が休みになるからだ。「日本から何度電話しても、誰も出ない」という経験をした人は、けっこう多い。クリスマスは知っていても、イースターについては聞いたことがない人の方が多いのが日本人の特徴だ。

卵は、生命の源、またヒヨコが殻をやぶって出てくることがキリストのよみがえりを象徴していると言われ、イースターには欠かせないものとなっている。また、ウサギは多産なので、繁栄の象徴として登場し、いつのまにか卵とドッキングして「イースターにはウサギが卵を持ってくる」という話ができあがってしまったらしい。サンタ伝説と同様に、「誰かがなんか旨いもんを持ってきてくれる」という筋書きを、キリスト教徒はことのほか好むようである。

さて、イースターには卵に色鮮やかな絵を描き、それを庭のあちこちに隠しておき、子供たちが卵を探すという「イースター・エッグ・ハント」という遊びが行われる。これは屋外行事なので、復活祭の週末に豪雪が降ると、吹雪のハロウィーンと同様に悲惨なことになる。「うちは子供がいなくて良かった〜」と思う瞬間だ。

このお祭りは、 クリスマスと同じく家族や親戚が集まって食卓を囲む習慣になっており、真面目に復活祭を祝う主婦にとっては「またご馳走用意しなくちゃ、あ〜あ!」と頭痛のタネとなりうる。まして幼い子供がいる家庭では、イースターウサギと卵の演出も欠かせず、クリスマスの喧騒が終わってホッとしたのもつかの間、買い物と飾りつけに駆り出される親たちは全くご苦労なことだと思う。

復活祭の食卓に並ぶご馳走は、パイナップルと共にローストしたハムが定番。だからこの時期スーパーでは、パイナップルが山のように積まれて大安売りとなり、カートを押す主婦が砂糖の山にたかるアリのように群がる様子を見ることができる。ハムの代わりに子羊のローストが使われることもあるが、ハムのほうが一般的のようだ。

またウサギがメインキャラとなるこの行事のシーズンは、ペットショップでかわいい子ウサギが売りに出される。子供にせがまれて買ったものの世話しきれず、動物収容所に捨てに来る親たちがあとを絶たず、SPCAなどはウサギだらけになるという。クリスチャンにとってはキリストの復活を祝う大切な行事だが、小動物には全くもって受難である。

我が家ではとくに復活祭を祝うことはしないが、このシーズンには卵が大安売りとなるのがうれしい。いつもは高価なオーガニック卵も、この時期には普通の卵と同じくらいの値段まで下がる。この時期にたくさん卵を買い込み、卵の酢漬けを作って保存する。ちょっと小腹が空いたときのオヤツや、お酒のおつまみ、サンドイッチの具やサラダのトッピングなど、とても重宝する。冷蔵庫がなかった時代から続く、主婦の知恵の一つである。

また、復活祭後にはチョコレートの大安売りが見逃せない。毎年復活祭用に、鮮やかな包装紙に包んだ卵型のチョコレートが売り出される。いまどきゆで卵をもらって喜ぶ素直な子供も少ないので、卵型チョコが代用としてよく使われるが、これがお祭りの後はタダ同然の値段で店頭に並ぶのだ。季節ものなので、祭りが済んだらできるだけ早く売ってしまいたいらしい。チョコの中にマシュマロやクリームが入ったものなど様々な卵型チョコがあるが、どれも腐るものではないので買っておいて損はない。

イースターが過ぎれば、長く厳しかった冬も終わり。
雪が融け、新緑が顔を出すのももうすぐ。イースターのウサギは、春を告げにやってくるかわいいお使いなのだ。

ピクルド・エッグ
(卵の酢漬け)

卵の酢漬け

卵12個、ビーツ(赤かぶ)の缶詰一缶、玉ねぎ一個、砂糖1/4カップ、酢1 1/2カップ、水1カップ、塩小さじ1、ピクリング・スパイス(漬物用スパイス。なくても可)

卵は固ゆでにして殻をむき、保存用の瓶に入れる。玉ねぎは薄切り、ビーツは汁を切って瓶に入れる。鍋にビーツの汁、砂糖、酢、水、塩、スパイスを入れて煮立て、卵の入った瓶に加える。蓋をし、熱がとれたら冷蔵庫で保存する。三日ほどして味がなじんだら食べられる。

ビーツが卵を鮮やかなピンクに染めてくれるので、パーティーの一皿にもなる美味しいゆで卵です。卵の酢漬けにはこの他にも、ビーツを使わないレシピがいろいろあるので、たくさん作って冷蔵庫で保存しておくといろいろ使えて便利です。

卵の断面

(2007年4月20日)

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